ここでは、ウォーキングの効果について、いくつかの面からまとめてみます。
いままで、とくに運動を心がけていなかったかたも、ウォーキングなら比較的導入しやすいのではないでしょうか? 「歩くこと」を「エクササイズ プログラム」として、
「意識しながら」
行うことで、いままでよく動かしていなかったような筋肉や関節を活動させることができます。これについては、次回以降の「ウォーキングのフォーム」のところでくわしく解説させていただくことにしましょう。
これは最近になってよくいわれるようになってきました。1.にも関連しますが、使わなかった筋肉や関節を使うようになったり、着地時に足の裏に刺激を感じることで、私たちの脳の機能を活性化できると考えられています。もちろん、ウォーキングに限らず、他のあらゆるエクササイズについても同じことがいえると思います。
また、ウォーキングの場合、からだの中に酸素をとり入れながらエネルギーを分解し、長時間の運動を可能にする
でもありますね。そのことから、全身の血流量が長時間にわたって増加し、それが脳の活性化につながるという人もいます。実際には、脳への血流は、運動の強さにかかわらず一定(約750ml/分 Andersen, 1971)であるとされていますので、血流量の増加が脳全体の活性化に関係してくるのかどうかはわかりません。ただし、脳の運動をつかさどる領域については、その血流量が安静時の50%以上になるともいわれています。
ウォーキングでは、ほとんどの筋肉がその動作に関連することになります。これらの筋肉においては、組織における酸素・二酸化炭素の受け渡し(組織呼吸)の能力、とり入れた酸素を使って長時間にわたり、エネルギーを分解する能力などが高められます。
同時に、これら多くの筋肉に血液と酸素を送り込むために、肺呼吸機能・循環機能も高められることになります。結果として、全身持久力(スタミナ)が高まることでしょう。
私たちの脳の働きに目を向けてみましょう。
脳においては、身体活動をつかさどる領域と、精神活動をつかさどる領域は異なります。基本的に、私たちの脳は、ある場所が盛んに活動しているときは、他の領域の活動は抑えられています。ですから、ウォーキングで身体活動を行うことにより、精神活動を担当する領域を休息させることができると考えられ、これが精神的なストレスを解消するのに役立つ一つの理由です。
また、実際には、身体的ストレスと精神的ストレスは深く関係しています。
外部刺激が感覚器(五感)を通して脳などの中枢を緊張させ、その緊張信号が筋肉の緊張を招きます。その筋肉から「筋肉が緊張しているぞ」という信号が返り、中枢はより緊張するわけですから、どこかで断ち切らないと、「悪循環」になってしまいますね。
また、筋肉に疲労物質が極度に蓄積した状態になっていると、その周囲の筋肉が緊張信号を発し、中枢にストレスを起こします。
ウォーキングを行うことにより、筋肉内の血流を高め、疲労物質を除去することで、内因性のストレスを低くできることも考えられるのです。
そのほか、運動不足の人はウォーキングにより快適な睡眠を得られるようになるかもしれません。私たちのからだは、日内リズムの支配を受けていますが、運動不足で昼間の体温上昇が少ない場合、不眠を招きやすいとされています。
適度なウォーキングを行うことで、不眠を解消することができるかもしれません。
かつて「成人病」と呼ばれた各種疾患も、すでに「成人」のものだけとはいえなくなってきました。
生活習慣病の危険因子の一つに「肥満」があります。たとえば、肥満が進むと、血糖値を抑える「インスリン」というホルモンが効きにくくなり(インスリン抵抗性)、高血糖・糖尿病の原因になります。
積極的にウォーキングを行うことによって、エネルギーを消費することにより、肥満を予防したり、解決したりすることができます。このことにより、上で述べたインスリン抵抗性も改善されるでしょう。私の場合は、ウォーキングだけでなく、筋コンディショニング(レジスタンス エクササイズ)を併せて行うことで、より効果が高まると考えています。
これらの効果については、必ずしもウォーキングに限ったことではないのですが、人気ナンバーワンのスポーツですし、これから運動を始める人にも敷居の低いプログラムです。このサイトをご覧になってウォーキングを始めるかたは、単に歩く、というより
「ご自分のからだの状態」
にできるだけ意識を振り向けながら、ウォーキングを楽しんでいただきたいと思います。また、その状態に慣れてきたら、周りの景色を楽しんでみたり、新しいエクササイズにチャレンジしてみたり、運動の幅を広げていただきたいですね。