エアロビック エクササイズ aerobic exercise は、日本語では
「有酸素運動」
と訳されています。有酸素運動を厳密に定義するのはむずかしいのですが、簡単にいえば
動かす運動を総称したものといえます。
1960年代後半に、ケネス クーパー博士が
「エアロビクス(aerobics)」
という全身持久力を高めるプログラムを発表してから、世界中に広がりました。
この運動を定期的に実施することにより、「全身持久力(全身的なねばり強さ、スタミナ)」を高めることができるとされています。
また、運動のエネルギー源として脂肪を使うことができるため、「脂肪を減らす運動」 としても親しまれていますね。
有酸素運動の代表的な種目として、ランニング、ジョギング、ウォーキング、エアロビック ダンスなどがあります。
まずは、あなたの「感覚」が教えてくれる「自覚的運動強度」に目を向けてみましょう。
「自覚的運動強度」については、有名な指標としてボルグのスケールがあります。下の表をごらんください。
標示 | 自覚度 | 強度(%) | 心拍数(拍/分) |
---|---|---|---|
20 | もうだめ | 100.0 | 200 |
19 | 非常にきつい | 92.9 | |
18 | 85.8 | 180 | |
17 | かなりきつい | 78.6 | |
16 | 71.5 | 160 | |
15 | きつい | 64.3 | |
14 | 57.2 | 140 | |
13 | ややきつい | 50.0 | |
12 | 42.9 | 120 | |
11 | 楽に感じる | 35.7 | |
10 | 28.6 | 100 | |
09 | かなり楽に感じる | 21.4 | |
08 | 14.3 | 80 | |
07 | 非常に楽である | 7.1 | |
06 | (安静) | 0.0 | 60 |
この方法は、あなたが「運動中に感じていること」を数値に読み替えて、より正確に評価することを目的にしたものです。
たとえば、運動中に「ややきついかな」と思ったときには、この表では13番の標示に相当します(表示を10倍すると、20代青年の心拍数に匹敵するといわれます)。
通常、エクササイズの開始直後は標示の11番(楽に感じる)~12番くらいから開始することが望ましいでしょう。
特に持久力を高めることに重きを置くのでなければ、標示の13番くらいがおすすめです。
ただし、運動強度に関する感じ方はあくまで主観であり、個人によって大きく異なることを知っておかなければなりません。 次にあげる心拍数の実測も組み合わせることで、より強度の管理が行いやすくなるでしょう。
これはフィットネス クラブでよく使われる指標ですね。
心拍数をエアロビック エクササイズの強度の指標とする場合には、まず本人の
「最大心拍数」
を求める必要があります。
最大心拍数というのは、
「もうどんなに頑張ってもこれ以上は上がらないよ」
という心拍数の最大値のこと。 運動負荷テスト(医学的な持久力のテスト)を行って、その人の最大心拍数を実測するのが本来の姿ですが、全ての人に対してそれを行うのはかなり困難なことです。そのため、通常は以下の式で対象となる人の最大心拍数を推定します。
220-年齢
例えば年齢30歳の方であれば、
220-30=190
となり、その方の1分間当たりの最大脈拍は190であると推定できるわけです。
次にエクササイズ中に目標とする心拍数(ターゲット ハートレート)を求めます。最初は最大心拍数の60%の値を設定してみてください。もしあなたが30歳の健常者であれば、
220-30=190
190×60%=114
つまり、114をターゲット ハートレートに設定し、この値からスタートをすれば良いということになります。
この強さに慣れてきたら、次に説明する時間を伸ばすか、少しずつターゲット ハートレートを上げていくのが普通です。
特に持久力を高めることを目的としないのであれば、70%程度を上限にするとよいでしょう。
より高いフィットネスレベルを求める人は85%程度の強度を上限に、少しずつ強度を高めていけばよいと考えられます。
さて、心拍数は通常、人指し指、中指の先を揃えて手首や頸の動脈に当てて「脈拍」という形で測定します(医学的には心拍数と脈拍数を分けているらしいので、それにしたがって表記しています)。
とはいえ、ジョギングやエアロビック ダンスなどを行っている最中に脈拍測定を行うことは困難ですから、いったん止まって(あるいは軽く足を動かしながら)6秒などの短い時間で測定してみてください。それを10倍すればその瞬間の1分間の脈拍数を推定できます。
測定値は一つの目安です。「6秒の10倍」という方法は誤差が生じやすいということ、そして心拍は動きを止めた瞬間から急激に落ちるということを知っておいてください。
また、220-年齢で求めた「最大心拍数」そのものが統計から得られた指標ですので、この方法も一つの目安と捉える必要があります。 実際、かなりの個人差があることを私自身確認しています。この点で、より確実な運動強度を設定するため、自覚的運動強度と組み合わせて利用すると良いでしょう。
フィットネス クラブでは脈拍数を測定しながら最適な強度に調整するような据えつけ自転車(コンビのエアロバイクなど)が設置されている場合が多いですから、そちらを利用するほうが現実的かもしれませんね。
このコーナーで紹介した強度はあくまでも一般的な目安です。指導者によってもプログラムはずいぶん変わります。医師による指示を受けていらっしゃる方は、必ずその指示に従うようにしてください。
では、設定した強度で何分以上行ったらよいのでしょう?
専門家によって「○○分以上」という基準は若干異なります。しかし、実際のエクササイズ指導現場では「数分間の細切れ運動でもいいですから、無理のないところから始めてください」と指導しています。
通常、エアロビック エクササイズとしての効果を出すことを考えた場合は、一般的に20分は必要であるといわれます。
心臓と肺の機能を高め、筋肉で酸素を利用する能力を高めるためには、20分未満の時間では短すぎるかもしれません。体力的に自信がない方はもっと短い時間からはじめ、徐々に時間を伸ばして20分という一つの区切りを目指すようにしてみてください。
時間の上限についても諸説ありますが、私の個人的意見では60分以内でよいのではないかと思っています。張り切りすぎると長期間の継続が困難になるからです。エクササイズは継続してこそ意味があります。
強度も時間も決めました。次は週に何回くらい行えばよいのかということになります。
スポーツ科学・医学の世界では週3回以上(1日おき以下)が推奨されています。それ未満では、体力を維持できても向上させることができないと考えられているためです。
したがって、「週3回以上」の設定がプログラミングが理想であることは間違いないでしょう。
しかし、現代社会では、週3回、定期的にエクササイズのための時間をとるのは困難だという人が多いというのが現実ではないでしょうか?
このような場合は、時間を決めて運動するより強度や時間は少なくなるかもしれませんが、普通の生活動作をエアロビック エクササイズに代用して行う方法を併用すると良いと私は考えています。
例えば、「駅から自宅までの自転車を止めて歩行に変える」「会社の中ではエレベータを使わず、努めて階段を利用する」などです。
定期的なエクササイズと、このような代用エクササイズを頻繁に行うことで、週3回のエアロビック エクササイズなみのプログラムを目指すということです。
こういった努力に対し、「エアロビック エクササイズはあくまで20分以上行うことが前提。階段上りのような細切れエクササイズでは効果は期待できない」という反論が多いのも事実です。
しかし、少なくともエネルギーの消費量が増えるのは間違いのないことで、肥満防止などの対策としてかなり有益であることを私自身指導の中で実感しています。
『毎日ライフ』(1992年12月)の『中高年者の健康づくりのための運動(池上晴夫)』の中に、歩数と健康の関連の中で
「続けて歩く必要はありません。細切れで良いのです」
とするコメントがあります。これも細切れ運動にも価値があることを示していると思います。
また「週1回だって全く効果がないとはいえない」という説を唱える人がいます。肉体的な効果のみならず精神的な効果も考慮すべきであるというわけです。
「最低○ヶ月以上」という言い方をする専門家もいますが、選手ならまだしも、一般の方が一時的に体力を高めることに何の意義があるか疑問に思います。気楽に「永続させる」ことを目標にしなければなりません。
ただし、「これだけの期間に、これだけの目標を達成する」「期間を決めてプログラムを切り換える」という意味での区切りであれば、大いに意義があるでしょう。通常は3ヶ月を1つの区切りとする場合が多いようです。
上でも述べたことですが、エクササイズは永続できるものでなければなりません。そのためにはあなたご自身に合った種目を選択する必要があります。
現代のエクササイズ事情については、次のような表現をよく見かけます。
「人間は運動をやらなくなった。
その代わりにエクササイズというものを行わなければならなくなった」
さらに、
「エクササイズを行わなければ生活習慣病が待っている」
という脅し文句まで添えられることも!?
私自身はエクササイズというものが「その人が楽しめるもの」であるべきだと考えています。そうでなければ多くの場合、人はエクササイズを続けることができません。
もちろん、「安全性」に基づいたプログラムである必要があり、決して無理があってはならないのです。
楽しさを重視する場合は「スポーツ種目」をエクササイズの代用として利用することが最適ですが、スポーツ種目のほとんどのフォームがからだの一部に負担をかけるものです。
スポーツ種目を過剰に行った場合には、使いすぎ症候群などのスポーツ傷害が発生する可能性が高くなります。ここまで楽しむのであれば、必ずしもフィットネス目的ではなくなった、といわざるをえません。
したがって、フィットネスを重視する場合には一つの種目に入れ込むのではなく、さまざまな種目を複合的に行うのが望ましいのではないかと思います。
次の項目でいくつかの代表的な種目を上げますが、それは例にすぎません。ご自分に合った、長く続けられる種目を見つけてください。
エアロビック エクササイズという言葉で最も連想されやすいのがこのエアロビック ダンスです。
単に「エアロビクス」と呼ぶ人も多いのですが、この言葉はその創始者であるケネス クーパー博士の商標でもあります。
このエクササイズは、「エクササイズは楽しくなければならない」という条件を満たすプログラムの一つといえます。
最近では、ダンス色の濃いエクササイズが人気を集めているようですね。
また、ステップを使用したエクササイズも人気があります。
エアロビック ダンスはビデオなどの教材を使っても実行できますが、やはりフィットネス クラブやスタジオなどの施設で行うほうが楽しく、エクササイズ効果も得やすいようです。興味がある方はぜひお近くのフィットネス クラブでチャレンジしてみてください。
ジョギングとは、とぼとぼ歩く、というような意味がありますが、通常は軽く走る行為を指します。持久力を高める上でとても有益なエクササイズですが、着地の瞬間には体重の約3倍の衝撃が足に加わるため、下半身の関節への負担を心配する声も聞かれます。
BMIが標準体重より高い方の場合(こちらで調べることができます)、ジョギングより次に紹介するウォーキングのほうが好ましいでしょう。
中原の父は、すでに40年以上もランニング・ジョギングを楽しんでいますが、未だに足を痛めた、という話を聞きません。体重も70kg超えていることを考えると、フォームがとても重要な要素になりそうです。
運動場のある公園などを探して極力土のトラックの上を走ることが望ましいでしょう。
また、シューズを選ぶ際は、マラソンシューズではなく、ジョギングシューズのような、底の厚いものを選択すべきでしょう。
※底の厚さについては、賛否両論があります。厚すぎるものについては、足の感覚や機能を損なう原因になる可能性があるというものです。ただ、私自身はエアロビック エクササイズを高頻度に行う人の場合、しっかりとした作りの、クッションの効いたシューズは障害予防に役立つと考えています。
ジョギングの場合比較的下半身に負担をかけやすいということから、最近ではウォーキングを勧める医師・インストラクターが多いようです。 その結果、日本国民にとって最も人気の高いフィットネススポーツとして親しまれるようになりました。
ただし、多くの場合、その医師が実践している運動を最良のものとして患者に伝える、という傾向はあるようです。
ウォーキングの場合はジョギングと異なり、動作中に全身が宙に浮くことがなく、常に片足のうちのどちらかが地面についていることになります。このため、着地時の衝撃がジョギングと比較すると軽くて済むのです。
しかし、走ったほうが楽な速さまで達した場合、無理にウォーキングを行うのは不自然にも思えます。このケースでは走り出すのが人間の自然な摂理といえるでしょう。
なにごとも極端にするのではなく、必要な強度を確保するために必要なエクササイズを選択すると良いと私は考えます。
お持ちの自転車を利用してサイクリングに出掛けたり、あるいは固定自転車があればそれを利用しても結構です。
多くのフィットネス クラブが強度を自動制御するタイプのバイクを設置しています(機械ですから故障もあります。全面的に信頼せず、ご自分で様子を見ながら行ってください)。
自転車の場合、膝や足首に負担をかけにくいことから、肥満者のエクササイズとして推奨されることが多いようです。
ただし、漕ぎ方を誤ると(膝を内側に入れたり、外に出したりすると)逆に膝に負担をかけることがありますから、注意が必要です。自転車に乗られた経験のない方は徐々に慣らしていくようにしましょう。
本物の自転車の場合は、時々コースを変えて飽きずにエクササイズをできるという利点がありますね。そのかわり、交通量の多い道路では事故を起こしやすいとか、強度が一定ではない、という欠点も指摘しなければなりません。
固定自転車の場合は、強度を一定にして、比較的安全な環境でエクササイズができるという利点があります(ただし、室内温、湿度を適切に保ちましょう)。そのかわり、いつも同じ場所で同じことの繰り返しで、「飽きやすい」のが弱点ですね。
スイミングというのは、さまざまな側面を持ったエクササイズです。ここではエアロビック エクササイズの種目の一つとして紹介していますが、それもスイミングの持つ一つの側面に過ぎません。
ゆっくり長く泳ぐスイミングはエアロビック エクササイズであっても、スピードを出して短時間でチカラを出し切ってしまうような泳ぎ方をする場合は、アネロビック エクササイズということになります。
スイミングだけでなく、水を使ったエクササイズのことを、概念的に「アクア エクササイズ」「ウォーター エクササイズ」と呼ぶこともあります。狭い意味では、アクア エクササイズが水中エアロビクスを指すこともあるようです。
エアロビック エクササイズとしてのスイミングは、浮力を使うことによって、体重による膝や足首への衝撃を減らすことができる優れたエクササイズであるといわれます。このため、高齢者・肥満者に対してプログラムされることが多いようです。
しかし、全く弱点がないわけでもありません。水に対する恐怖心がある人はまずそれを取り払うことから始めなければなりません。そうなると、その他の陸上でのエクササイズを選択したほうが良いとも考えられます。
また、血圧の高い人に対して、基本的に水泳は勧められません。 骨密度の低い人も、長時間を水中で過ごすことは望ましくありません。
そのほか、水に漬かることによって(顔を水につけることによって)不整脈を誘発する人もいます。運動歴のない方、既往歴のある方、現在疾患をお持ちの方は過信せずに医師のアドバイスを受けください。
ICOマネージャーの中原が1993年頃に開発した技術追求型のエクササイズです。1997年にテレビ朝日系の番組「トゥナイト2」でも紹介されましたからご存じの方もいらっしゃるかもしれません(当時はフィットネス カンフーと表記していました)。
このエクササイズは格闘技の動きをフィットネス エクササイズとして利用したものです。
ここでは便宜上エアロビック エクササイズの種目の一つに含めてしまいましたが、実際には素早く動く、ヘヴィ バッグを叩くなど、アネロビックな動作が随所に含まれますので、純粋なエアロビック エクササイズではありません。
こちらのページで紹介しています。