中原雄一(
21/10/20 Wed 22:43
更新)
部分運動でその部分の脂肪は落ちる?
Q(質問)
- いつも、楽しく拝見させていただいています。
- 先日、ある健康医学系のホームページを見ていたところ、ある医学博士が「筋肉の育成と脂肪の燃焼には何の因果関係もない」とおっしゃっていました。「たとえば、腹筋を鍛えたからといって、お腹の脂肪が減るということはありえない。」ということだそうです。「男性の場合は、ウェストから、女性の場合はバストから脂肪が落ちてくるのが普通なので、女性は、腹部、ヒップ、太股の脂肪を落とすのは難しい。」そうです。
- 夏を目指して、一所懸命 腹筋の運動をがんばっていますが、意味がない、または効果が期待できないことなのでしょうか?(女性)
A(回答)
- ご質問ありがとうございます。
- 私自身はその健康医学系のページを拝見していないので本当の原文は分からないのですが、ご質問にある医学博士の言葉の引用そのものには、かなりの部分で誤解を招く表現があります。ここではそれも踏まえてお答えしたいと思います。
- 「筋肉の育成と脂肪の燃焼には何の因果関係もない」
- これは表現としては誤りになると思います。
- 筋肉を育成すること自体(筋同化作用=合成)にエネルギーが必要になるのですが、それが主に行われるのはトレーニング中ではなく安静時です。この安静時には平均で9割のエネルギーが血液中を流れるFFA(遊離脂肪酸)、つまり脂肪細胞から放出された脂肪酸が使われることが分かっています。
- このことから、筋肉の育成と脂肪の燃焼には因果関係が成立することが分かります。
- これは私自身の推測になりますが、そのページでは「部分的に、無酸素的に筋肉を使用することは、その周囲にある脂肪組織の脂肪の燃焼には因果関係がない」ということを表現していたのではないでしょうか?
- 「腹筋を鍛えたからといって、おなかの脂肪が減るということはありえない」
- ちょっと意地悪な解釈かもしれませんが、やはり、腹筋の筋肉の育成(合成)にはエネルギー、特に安静時には脂肪が必要になることを考えると、全く無関係であると断定することはできないでしょう。
- また、腹筋が発達することによって維持するためのエネルギー量も増えますが、少なくとも安静時にはそのエネルギーは脂肪でまかなわれるでしょう。そのエネルギー源として、おなかの脂肪が全く使われないということは逆に考えにくいですね。
- これも私の推測ですが、そのページでは「腹筋運動で使うエネルギーとしておなかの脂肪が優先的に使われるという因果関係はない」表現をしていた、もしくは表現したかったのではないかと思います。あるいは、それ以前に「通常の腹筋運動を行っているときは脂肪がほとんど使われず、グリコーゲン(炭水化物)が使われる」という事実をいいたかったのかもしれません。
- 「男性の場合はウエストから、女性の場合はバストから」
- 絶対とはいえませんが、そのような傾向があるのは事実です。女性の場合は 下腹部、内股、ヒップ、そして腕の後側が残りやすいように思います。
- 男性がウエストから、というのは男性の方に内臓脂肪が多いということも関係しています。
- 「一生懸命腹筋の運動を頑張っていますが、意味がない、または効果が期待 できないのでしょうか?」
- 確かに、腹筋運動で使うエネルギーはその周辺にある脂肪組織の脂肪が優先的に使われるわけでもなく、またそのような因果関係もありません。それこそがご質問にあるページで表現されていたテーマなのだと思います。
- しかし、「部分的な脂肪の燃焼」という観点ではなく、「部分的なサイズの減少」については、ないとはいえません。
- 私は同じコンセプトの減量のイベントを2年連続で行ったことがあります。その際、「腹筋系統の運動を3種目やらせたグループ」と「1種目しかやらせなかったグループ」のウエストに対する効果を見たことがあります。そのとき、前者のグループの効果の平均は後者のグループの平均の2倍でした。
- これについてまずいえることは、腹部の筋肉が強化され、おなかの内部にかかっている圧力(腹圧)に負けない腹筋が作られたのではないか、ということです。その結果姿勢なども改善され、総合的にウエストが細くなったのだろうと思われます。
- また、遺伝的に個人個人でカラダの各部の体温の高低が異なる、というデータがありますが「少なくとも体温の高い部分は脂肪が落ちやすい」という研究結果があるようです。
- 普段から腹筋運動を行うかたはその部分の体温を高めているわけですが、それが関係しているのどうかはわかりません。
※「部分やせ」についてはこちらにも情報があります。