ICO Library (図書室)
中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

II. プログラミングの基礎知識

目次

  1. トレーニング強度・回数
    1. 目的別の負荷設定
    2. 負荷設定の注意点
  2. トレーニング頻度
  3. 1回のトレーニング時間
  4. トレーニング期間
  5. トレーニングの進め方
    1. 漸進性の原則を活用する
    2. トレーニング コースを定期的に修正する
    3. トレーニング システム(方法)を変える

解説

1.トレーニング強度・回数

  • トレーニング強度intensityとは、トレーニング時にかける負荷の強さを示すものです。トレーニング強度の与え方にはいろいろな説がありますが、極めて一般的なものを紹介しておきます。

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i. 目的別の負荷設定

  • ここに挙げる負荷設定については、極めて一般的な指標であり、絶対ではありません。あくまで目安の1つとして捉えてください。
  1. 筋力増強が目的の場合
    • 負荷 … 最大筋力の85%以上
    • 回数 … 1~5 reps(低回数制)
  2. 筋肥大が目的の場合
    • 負荷 … 最大筋力の70~80%程度
    • 回数 … 6~8 reps(中間回数制)
  3. 筋持久力向上・シェイプ アップが目的の場合
    • 負荷 … 最大筋力の50%程度
    • 回数 … 10~15 reps(高回数制)

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ii. 負荷設定の注意点

  • i. では、単純に目的を3つに分け、それぞれの目的に使われる重量の目安と回数の目安を挙げてみました。
  • しかし、現実的にトレーニングは段階的に行わなければならないものであり、その段階別に目的はもう少し細かく設定しなければなりません。
  • また、スポーツ選手向けのウエイト トレーニングの場合は、スポーツ種目のシーズンに合わせたトレーニング プログラムの設定も必要になり、単純に一つの段階で「筋力強化」「筋肥大」「筋持久力向上」横並べにしただけでは不十分なのです。
  • また、運動の速度が変わることでも、実際に実行できる回数(reps)は変わってきます。
  • プログラムは単純に横に並べるだけでなく、縦、横、斜めの方向からも観察して、状況に応じた負荷設定を行わなければなりません。

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2.トレーニング頻度

超回復super compensation理論

 

図2:超回復の概念図

  • 1回のトレーニングを行うと、筋の微細裂傷、あるいは筋グリコーゲンの枯渇乳酸の蓄積など、さまざまな面で筋肉の破壊が起こります。当然この状態では、一時的に筋の機能が低下し、筋力水準も低下しています。
  • その状態から筋力曲線が元の水準まで戻っていく過程を回復compensationといいます。しかし、筋肉には以後に同じ負荷が与えられたとき再び傷つくことがないよう、元のレベルの水準を超えて成長しようとする性質があります。これを超回復と呼びます。
  • この超回復は無条件で起こるわけではなく、現在通常に受けている以上の負荷(過負荷)を与えて筋線維の破壊を急激に行い、回復に必要な休養栄養が与えられて初めて実現されるものなのです。
  • トレーニングは超回復の頂点に差しかかる時点で行うようにすると、もっとも効率よく筋肉の機能を高めることができるといわれます。下の図の一番上のグラフがそれを表しています。
  • しかし、超回復の頂点をはずしたタイミングでトレーニングを行ってしまうと、トレーニング効果が出るどころか、マイナスにしかならないことがあります。
  • 次の図の真ん中のグラフではあまりにも早いタイミングでトレーニングを行ってしまうため、オーバーワークoverworkとなり、筋力が低下の一途をたどってしまっていますね。さらに一番下のグラフでは、あまりにもトレーニングの間隔が開いてしまっているためにアンダーワークunder-workとなり筋力はいつまでたっても変わらないという状態に陥っています。

図3:超回復とトレーニングのタイミング

  • トレーニングの効率をあげるためには、最適なタイミングでトレーニングを行えるような頻度設定が必要になることが理解できます。
  • そこで、ここでは目安として各筋肉の超回復に要する時間を挙げてみました。ただし疲労度により回復時間は異なってきます。
  • 表 2 各筋肉の超回復に要する時間

    筋 肉 名 回復に必要な時間
    腹直筋、下腿三頭筋 24時間
    上腕二頭筋 36時間
    上腕三頭筋、三角筋、広背筋、大胸筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋 72時間
    • 上記の超回復の資料から、腹部や下腿部のトレーニングは毎日行ってもよく、上腕二頭筋には1日半、上腕三頭筋、三角筋、広背筋、大胸筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋には3日間の回復期間を置かなければならないことになります。
    • 始めたばかりの段階では負荷がさほど大きくないので、全身のトレーニングを週3回行うといった方法でのトレーニングで問題がないでしょう。
    • しかし、ある程度トレーニングが進んで使う重量が大きくなってきた場合には、回復時間を十分に研究して自分に合ったタイミングを知っておかなければなりません。
    • 上級者の場合はほとんどの部位で週2回のトレーニングを行うようです。さらに大腿部や下背部、大胸筋などの比較的大きな筋肉群では、週1回を高重量で、もう1回を軽い重量で行うなどの方法を採って、オーバー ワークを防いでいます。

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    3.1回のトレーニング時間

    • 初心者の場合1日で全身の種目を行うルーティンが一般的ですが、種目当たりのセット数が少なくなるので、さほど時間は長くならないでしょう。ウエイト トレーニングだけで20分~30分程度からが理想になってきます。詳しくは後述します。
    • 中級者・上級者に関しては行う種目数が増加するので、多くの場合種目を分割して各部位を日、もしくは時間帯を分けてトレーニングするようになることが多いようです。
    • それでも1日あたりの種目数は多くなりがちだし、また種目当たりのセット数も増えてくるでしょうから、トレーニング時間は必然的に長くなってくるはずです。
    • それでも90分は超えないほうが良いそうです。一般的にいわれる人間の集中力の限界を基準にしているからでしょう。
    • トレーニング時間は個人の考え方によって異なってくるものです。例えば1992~1997年ミスター オリンピア(プロフェッショナル ボディビルディングの最大・最高権威となる大会でのチャンピオンの称号)のドリアン イェイツDorian Yatesが日本に来たとき、「1日に多くても50分しかトレーニングしない」といっていました(ウォーム アップやクール ダウンの時間は省きます)。その時間に完全集中するのだそうです。
    • しかし、一般のナチュラルなトレーニング者にプロフェッショナルの、しかもドーピング使用者のトレーニング概念が当てはまるかどうか、疑問は残ります。

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    4.トレーニング期間

    • トレーニング効果はトレーニングを止めた時点で失われはじめるので、長く続ける努力をしなければなりません。
    • 多くは3ヶ月を1つの単位として、間に2週間程度の休みを挟みながら繰り返し行うパターンを繰り返しているようです。詳しくは次の項以降を参照してください。

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    5.トレーニングの進め方

    • トレーニングを続行していると、私たちの体はさまざまに反応し、以前は非常に重く感じた重量をとても軽く感じるようになったり、あるいは伸び悩んだりします。
    • また、一つのプログラムを延々と繰り返していると効果が止まったり、飽きてしまったりします。
    • この後の小項目で述べる方法を参照して、トレーニングの進め方を検討してみて下さい。

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    i. 漸進性の原則を活用する

    1. 目標回数設定方式
      • トレーニング目標を回数に置く方法です。つまり、体力が高まるに連れて回数を増やしていく方法のことです。
    2. 目標重量設定方式
      • トレーニング目標を重量に置く方法です。体力が高まるに連れて重量を増やしていく方法のことです。
    3. 複合方式
      • (1)や(2)の方法が単独で使われることはほとんどありません。たいていの場合その両者は組み合わせて用いられています。最も基本的な方法として用いられているのが次の例ででしょう。

    8回何とか持ち上がるという重量を設定後、トレーニングを開始する。

    慣れてきたから持ち上げる回数を増やしていく

    12回持ち上げられるようになったら、2.5~5kg重量を挙げる

    再び8回からチャレンジしていく

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    ii. トレーニング コースの中身を定期的に修正する

    • 多くの場合、3ヶ月に1回ほどの割合でトレーニング コースを変更していきます。変更の合間に2週間ほどの休息を入れてください。というのは、筋肉の回復は通常のルーティンの中で行われたとしても、腱や靱帯などの結合組織の回復はもっと時間がかかると考えられるからです。
    • 3ヶ月間ものルーティンになると腱や靱帯はかなりの疲労を蓄積している可能性があるでしょう。結合組織の疲労の回復も視野に入れ、2週間程度休むことは積極的な姿勢の現れであり、決して消極的な姿勢を示すものではありません。
    • トレーニング コースの変更は、トレーニングに対する慣れや飽きをなくし、新鮮な気持ちでプログラムにのぞめる様に行う必要があります。そのために現在行っているトレーニング コースの中身を若干変更してみることから始めると良いでしょう。種目を入れ換えたり、順序を変えてみたりすることが可能です。

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    iii. トレーニング システム(方法)を変える

    • ii. と考え方は同じですが、コースの中身を修正するというより、トレーニングの方法を全く変えてしまう、という意味になります。
    • 例えば通常のセット システムを行っていたものを、スーパー セット システムsuper set systemに変えてしまうのです。ii. より大幅な変更であるといえます。
    • トレーニング内容をリフレッシュして、筋肉に大きな刺激を与える、という意味では非常に有効な変更です。
    • 詳しくはトレーニング システムのページを参照してください。

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