肥満の種類については、「肥満とは?」のコーナーで解説していますが、単純性肥満の減量のためによくとられる手段として、
「エクササイズ(運動)」
や
「ダイエット(食餌療法)」
があります。
しかし、単純に運動で消費エネルギーを増やしたり、食事で摂取エネルギーを減らすという「断片的な」考え方では、減量を達成したり、その効果を維持したりするのは大変です。
「ふとる・やせる」でも述べたように、人の体重の増減にはさまざまな要素がからんでいて、毎回必ずしも同じ結果が出せるとは限りません。また、私たちが社会生活を営んでいる以上、必ずしも一つの方法を継続的に行える保証もありません。
ですから、理想的な減量プログラムを考える場合は、体重を減らす手段をどのように生活の中に盛り込むか、ということから検討し、総合的にバランスを取っていかなければなりません。
たとえば、運動を行う機会が多い時期にはエクササイズプログラムを積極的にこなしたり、そのような機会に恵まれない場合は、普段の生活の中で体を積極的に動かす機会をもうけたり、食事を調整することを中心に行わなければならないでしょう。
また、減量を行う場合、
「ストレスの蓄積」
が大きな問題になります。ストレスは心と体のバランスを乱し、減量に悪影響を与えるだけでなく、摂食障害などの大きなトラブルの原因になることもあるのです。
その意味で、減量というのは、
「生活を楽しむ」
くらいの余裕を持ってすすめるべきだと思います。その中で、ICOの考える減量法の体系は、以下のようなものとなっています。
上に述べたエクササイズやダイエットを単独で行うのではなく、それらをライフスタイルの一部として扱います。
ICOではエクササイズも含んだアクティビティ(活動)や、ダイエットを含んだニュートリション(栄養)だけでなく、レスト(休養)やメンタル ケア(心理的ケア)もライフスタイル チェックの項目に挙げています。
それぞれの項目は完全に独立したものではなく、それぞれ関連しあったものです。うまくバランスをとりながら、ライフスタイルを改善していくことが望まれます。
バランスがとれる、ということについて、
「各要素が常に均等に配分される」
と解釈をされる人がいますが、それは違います。その時の状況によって、これらの要素の配分が変化しすることによって全体的で動的なバランスをとり、周囲状況に適応できるのです。
肥満をつくるライフスタイルの一つに
「身体活動の不足」
があります。 日本人の摂取エネルギーを見ると、トータルエネルギーは数十年前と比較して減少傾向にありながら、肥満傾向は強まっていることが知られています(若年層の女性は逆の傾向を示すそうですが)。
この原因の一つを「身体活動の不足」に求めることができます。
こういった問題のあるライフスタイルを理想の状態に徐々に近づけていくのが「アクティビティ」プログラムです。
これは単に「エクササイズ(運動)」をするだけのものではなく、
「生活全体を活動的なものに変える」
ことを目的としています。そして、最終的にはそれが自然に実現できる段階を目指すのです。
急に運動量を増やしたり、活動量を高めてしまった場合、減量効果は高くてもどこかに無理がきて障害を起こしたり、長続きさせることができなくなってしまうでしょう。したがって、時間の経過に伴い段階的に実施項目を増やしていく形になります。
活動量を高めるのと同時に、入ってくる食事をコントロールしていくのがこの「ニュートリション」プログラムです。
ただし、単純に「入ってくるエネルギー量を単純に減らしてしまえ」という方法は必ず破綻を来します。少々時間をかけて「本当に必要な量」を見極め、食の嗜好に応じたプログラムとしなければなりません。
食は文化です。楽しむ心を忘れてしまった食事は長続きしません。 飲酒も人間だけに許された一つの文化だと思います(ビールを飲む牛もいるようですが…)。厳しく制限を行うだけでは長い目で見た場合成功することはできません。
ICOでは、食べ方、食事の考え方、タイミングの取り方などで減量に適した食生活を行うことを目標にニュートリション プログラムを実施していくことが望まれます。
上記の点はある特定の疾患をお持ちで治療のために食事療法を行われている方には当てはまりません。
現在まで最も研究が遅れている分野です。トレーニングの効果は「休息」により回復させなければ獲得することができません。
時間で見た場合、休息には
「長期的な休息」と「短期的な休息」
があります。
また、その行い方によって
「消極的休息」と「積極的休息」
に分けることもできます。
プログラムに区切りをつけ、めりはりを付ける意味でも重要な役割を果たすことになるでしょう。
「ストレスと減量」でも述べますが、減量プログラムには「ストレス」がつきものです。このストレスが減量が進まない一つの原因となったり、大きな問題としてのちのち大きな影響を与えることがあります。
適切なケアを行うことで、ある程度ストレスを軽減することが可能といえるでしょう。常に余裕を持って、気持ちの強さとそれが向かう方向を適切に保つことが大切です。