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中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

運動の概要と運動療法

はじめに

  • 近年、全体的に見て「人」は動かなくなりました。その昔(比較的最近まで)、人の生活形態は運動そのものでした。ところが現在のスタンダードな生活スタイルは運動とは程遠いものになっています。つまり、生活スタイルと運動は、全く別物になってしまったのです。
  • このような生活スタイルの中で、運動は意識しなければ行われなければならないのが現状です。それを適切な分だけ確保できない場合、「運動不足」という深刻な状況が発生することになります。
  • また、食事内容も大きく変わりました。食事に占める動物性脂肪の割合が増え、その摂り過ぎも問題になってきています。「運動不足」により消費するエネルギーが激減しているのに、摂取しているエネルギー量は30年前と比較して(ほとんど)減っていません。このような飽食の状況は「過食」を生み出します。
  • このような運動不足、過食などの悪条件が重なった結果「成人病(生活習慣病)」が増加していると考えられます。

運動の種類

  • 一口に運動といってもいろいろな種類があります。一つは「競技としての運動」です。この運動は過剰なトレーニングを生みやすく、健康という側面からはいろいろな面での弊害を招くことがあります。過去にICOのコラムにもありましたが、一部の科学者に「スポーツはカラダに悪い」といわしめる原因となっています。
  • 次は「健康を維持、増進するための運動」、あるいは「正常な発育のための運動」です。これについては、別項「運動の健康に対する効果」でデータを挙げて解説することにします。
  • そして、これは私の独断の分類になりますが、「趣味としての運動」という考え方が必要になるように思えます。「健康のための運動」というのは漠然としていて長続きさせるのが難しいものです。「楽しい」「おもしろい」という要素がなければ、「生活と切り離された運動」を継続していくのはかなり困難でしょう。
  • この概念は私のように民間のスポーツ クラブで勤務されているインストラクターの方や、そのようなスポーツクラブでトレーニングされているような方であればご理解いただけると思います。スポーツ クラブを常時利用されている方の多くが、エクササイズを行うことを「趣味」として捉えていらっしゃるのです。
  • 「趣味としての運動」は、「競技としての運動」と「健康を維持、増進するための運動」の中間に位置する、非常に曖昧な概念の運動です。度を越した趣味は「競技」に限りなく近づくでしょうし、適度に行うものは「健康」に役立つでしょう。

運動療法

  • 上記に加えて「運動療法」の考え方があります。
  • 運動療法は、各種疾患の治療に「運動」を応用する方法です。
  • 別の項で述べる予定ですが、運動にはリスクが伴います。どんなに気を付けても外傷事故や突然死などを完全に防ぐことはできません。
  • 医師が各個人の特質や症状に合わせて薬品を処方するのと同様、その人に必要と思われる処方せんを発行し、さまざまなフィードバックを行いながら慎重に進めることになります。
  • 平成8年より、運動療法処方せんの発行が保険点数化されています(病院の規模などによって制約があります)。
  • また、「指定運動療法施設」の認定を受けている民間の運動施設で運動療法を実施した場合、それに掛かる料金が医療費として控除の対象になる、というシステムもそれ以前に始まっています。

運動療法処方せん発行に関する意見

  • ある講習会で、「厚生省」と「日本医師会」の間で、運動療法処方せんを発行できる医師の資格について、見解の相違があったという話が出ました。
  • 厚生省は「スポーツ医」の認定を受けた医師のみに限定するべきだと考えていたらしいのですが、日本医師会は、「すべての医師が公平に運動処方を行う機会を与えられるべき」という見解を崩さなかったそうです。
  • 日本医師会からは「運動療法処方せん」の作成マニュアルが発行され、医師はそれを見ながら運動療法の処方せんを作成することができます。
  • このマニュアルの編集者が講習を行ったあと、当然のように運動指導者側から「運動を経験したこともないような医師でも、医師という資格とこのマニュアルで運動療法処方せんを発行できるのか? 果たして安全といえるのか?」という疑念の声が上がっていました。
  • それに対するマニュアル作成者の答えは、「私はそう思わない。マニュアルがあって、それを間違いなく行うことで、運動を知らない医者でも運動処方を書ける」というものでした。
  • しかし、運動を全く行ったことがない人には、運動の感覚をつかむのに苦労するでしょう。処方せんを書いてもらう側も、「腹が出っ張った指導者」「キンニクの退化した指導者」を信頼することはできないと思います。

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