リラクセーション ルーム
中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

自律訓練法

目次

自律訓練法について

自律訓練法は、リラクセーション(緊張緩和)を目的としてドイツのシュルツSchultzが開発した心理的・生理的療法のひとつです。

この訓練法は催眠との関係がとても深いものです。催眠には疲労の回復や心身の健康獲得という効果があると考えられていますが、自律訓練法ではこの「催眠」の状態を、ある種の公式を用いた「自己暗示」によって再現することにより、治療的効果を期待したものでした。

ここでは、スタンダードなプログラムをさらにICOなりにまとめた形で紹介します。

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心構え

プログラムの間はなるべく「無心」でいるように心がけましょう。このプログラムではご自身の頭の中にいくつかの「公式」を唱えるのですが、その公式に対して「受け身」の姿勢をとってみてください。

「リラックスしよう」という努力は、「リラックスする」こととは反対の行為といえます。

効果には個人差があります。あせらないこと!

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環境の選び方

外部から伝わるあらゆる刺激(五感による)を極力少なくするため、静かで、あまり明るくなく、風通しのよい部屋をお選びになることをおすすめします。

また、服装はパジャマのような、体を締めつけないものがよいでしょう。

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回数・頻度

通常、1日に2-3回行うのがよいと思われます(朝・晩 or 朝・昼・晩)。

1回のトレーニングは、60秒×3セット。計3分ということになります。

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自律訓練法の実際

  1. 排尿・排便を済ませる
  2. 姿勢をとる
    1. 座位(1)
      • 最も広く行われているものです。sit1.gif (1854 バイト)
      • あまり場所を選ばず、実践的な方法であると思われます。
      • この方法は椅子に腰掛けて行いますが、もし背当てがある椅子をお使いの場合は少し前に腰掛けます。背もたれには寄り掛からないでください
      • 椅子は両足の裏がフロアにぴったりとつく高さであることが必要です。
      • 椅子に腰掛けたら、
        1. まず、両足は肩幅、両手首はふとももの外側へ自然に垂らしてください。
        2. 次に、背筋をピンと伸ばした後、一気に全身の力を抜いて肩・頭を落とし、リラックスした姿勢をとります。
    2. 座位(2)
      • こちらは背当てを使いますが、頭までもたれかかることができる椅子である必要があります。sit2.gif (2228 バイト)
      • 椅子に寄り掛かったら、
        1. 両足を軽く開いて、膝から下を平行に並べます。
        2. 両肘をひじ掛けの上に軽く乗せます。肘の角度は120度程度が最適です。
        3. 全身をリラックスさせましょう。
    3. 仰臥位
      • ベッドなどに仰向けになり、全身の力を抜いてリラックスする方法です。lying.gif (1586 バイト)
        1. 両足はV字型に軽く開きます。場合によっては両膝の下にクッションなどを置くと腰部の緊張を和らげるでしょう。
        2. 両腕は胴体に触れないよう、軽く開いて伸ばします。てのひらを開いておきましょう。
        3. 全身をリラックスさせます。
  3. 目をつぶる
    • ほかにも「半眼」などの方法がありますが、ここでは閉眼で行います。
  4. 公式を思い浮かべ、受け身の姿勢をとる(1回60秒)
    1. 「気持ちがとてもおちついている。右腕が重い」(公式1-1)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
      • 「重くしてやるぞ!」と考えてはいけません。あくまでも受け身です。
    2. 「気持ちがとてもおちついている。左腕が重い」(公式1-2)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
    3. 「気持ちがとてもおちついている。右脚が重い」(公式1-3)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
    4. 「気持ちがとてもおちついている。左脚が重い」(公式1-4)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
      • 両腕・両脚に重量感が得られるまでは、ここで終わるようにしましょう。この場合「消去動作」に移ってください。
      • 逆に重量感を得られるようになったら、i.-iv.までの公式をまとめて「気持ちがとてもおちついている。両腕・両脚が重い」(公式1-まとめ)という公式に切り換えてください。そしてそのあと.v.の公式に続けます。
    5. 「気持ちがとてもおちついている。右腕が温かい」(公式2-1)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
    6. 「気持ちがとてもおちついている。左腕が温かい」(公式2-2)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
    7. 「気持ちがとてもおちついている。右脚が温かい」(公式2-3)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
    8. 「気持ちがとてもおちついている。左脚が温かい」(公式2-4)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
      • 両腕・両脚に温感が得られるまでは、ここで終了します。この場合、「消去動作」に移ってください。
      • 逆に温感が得られたら、v.-viii.までの公式をまとめて、「気持ちがとてもおちついている。両腕・両脚が温かい」という言葉に変えます。そして、ix.の公式に続けるのです。
    9. 「気持ちがとてもおちついている。ひたいが涼しい」(公式6)
      • 頭の中でこの公式を思い浮かべます。
      • 今までは各部の緊張をとるような公式だったのに、この公式が逆に「緊張」を招く言葉であることに注意してください。
      • 手足は温かく、頭は涼しいという概念は気功などでも同じです。
      • この公式は、頭痛、高血圧、脳波異常、てんかん、動脈硬化、その他の心臓血管系の疾患、および頭部外傷のある方は行わないでください。
  5. 消去動作
    • 上記が終わったら、必ず消去動作(覚醒のための動作)を行ってください。これを行わないと、普段の生活状態に支障をきたすことがあります。
      1. 目を閉じたまま、拳を握り、両肘を脇腹に引きつけ両腕を強く曲げます。
      2. 次に両方の拳を勢いよく前に突き出しましょう。この動作を3回繰り返してください。
      3. 1回、深呼吸を行います。
  6. 目を開けます。そして、最初に戻って、同じ練習をもう2回、計3回繰り返すのです。

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注意点など

自律訓練法では練習中に「自律性開放」と呼ばれる副作用的な症状が現れることがあります。例えば「肩がこったような感じ」とか、「肘の疼き」などです。

このような症状が起こった場合、通常の公式に加え、「肩凝りが消えていく」「肘の疼きが消えていく」というような、症状に合わせたフレーズを使うと、症状が消える場合があります。

練習を続ける中でこれらの症状が改善されない場合、練習を中止してください。練習を続けたい場合には専門家のアドバイスを受けましょう。

スタンダード プログラムには、上記で紹介した公式以外にもいくつかの公式が用意されています。興味のある方は類書を読まれるか、詳しい専門家の方に指導をお受けになることをおすすめいたします。私自身、いくつかの講習会を受けましたが、直接指導を受けたほうがより理解しやすいと思います。

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