ストレスstressという言葉は日常よく使われる非常になじみ深い言葉ですね。ただ、この言葉はあとに述べる「ストレッサーstresser」と混同されて使われている場合が多いようです。私自身、日常生活の中では特別に使い分けていないような気がします。
まず、ストレスという言葉の本来の意味を調べてみることにしましょう。
この言葉は、物理学では「物体にある力が加わったときの物体内の力の不均衡、すなわち歪みである」と定義されています。
医学の世界でストレスという言葉を初めて使ったのはハンス セリエHans Selye(1907-1982)という人です。彼は有害な因子(刺激)によって体に生じた歪みと、それに対する防衛(適応)反応を「生体内の歪みの状態」、すなわちストレスと呼んだのでした。
一般的に、この有害な因子・刺激も含めて「ストレス」という呼び方をすることも多いのですが、ストレスの原因となる因子・刺激は「ストレッサー」と呼ばれるもので、本来両者は区別されるべきものです。
セリエが医学の世界で「ストレス」を唱える以前にさかのぼってみます。
まず、代実験医学の開祖といわれるベルナールC. Bernardは、生体の内部環境は平衡を保つことが必要であり、外部環境が変化しても内部環境は一定であるとしました。例えば私たちの体は体温をある程度一定にしておかないと、生命活動を維持していけません。
その後、アメリカの生理学者ウォルター B キャノンCannonは、この内部環境が一定した状態を恒常性(ホメオスターシスhomeostasis)と呼びました。この人は生理学の分野で初めて「ストレス」という言葉を使用した人として有名です。
この恒常性というのは、周囲の環境やそれに伴う刺激に合わせて自律神経やホルモンなどが微妙に活動した結果であるとされています。つまり、私たちの体は常に内部環境を最適な状態に保つためにさまざまな変化を起こしているのですが、これは恒常性を保つための環境に対する適応力であるといえます。
日本は春夏秋冬を明確に迎える国ですが、外気温は季節により大きく変わります。それでも私たちの体温はほとんど左右されることはありませんね?
さて、ベルナール、キャノンを経て、医学分野からはセリエが登場しました。セリエは先人の研究を参考に、自らの成果を加えてストレス学説を作り上げました。
セリエによると、生体が外部から刺激を受けて緊張やひずみの状態を起こすと、これらの刺激に適応しようとして生体の内部に非特異的(一般的)な反応が起こるのだそうです。
非特異的反応というのは特異的反応の反意語です。
特異的反応というのは「暑いときには汗をかく」というようなある刺激に対して決まった反応ですが、非特異的反応というのは刺激がどのような種類であるのかに関係なく起こる反応のことです。
この非特異的な反応をセリエはストレスと呼んだのでした。さらに、これらの反応を引き起こす、生体にとって有害な環境因子をストレッサーstresserと表現しました。
また、ストレッサーに対する生体の適応現象を「適応症候群」と提唱し、ストレス学説の基礎を築きあげたのでした。
もうお気づきかもしれませんが、日本で日常的に使われるストレスという言葉は、ストレッサーとかなりの部分で混同されています。ここではストレスの性質について正確な情報を提供する目的で、両者を区別します。
さて、セリエはまた、「ストレッサーに対する生体の適応現象である適応症候群には全身反応としての全身適応症候群(般適応症候群とか、汎適応症候群、もしくはGASともいいます)と局所反応としての局所適応症候群とがある」ことを指摘しています。
生体が連続的にストレッサーにさらされたとき、全身に生じる適応現象を全身適応症候群と呼びます。
この症候群は大きく3期に分けることができます。
第1期は警告反応期と呼ばれる、ストレッサーによる身体の緊急反応の時期です。これはさらに、ショック相と反ショック相に分けられます。
ショックに対する適応がまだ発現する以前の段階で、体温低下、血圧低下、血糖値の低下、神経活動の抑制、筋緊張の低下、血液の濃縮、組織崩壊、急性胃腸潰瘍などが出現します。
これは数分~1日くらい続いたあと、次の反ショック相に移行するのですが、ショックがあまりにも強い場合はそのまま死に至る可能性もあります。
ショックによる生体防衛反応が高度に現れる時期です。副腎肥大、胸腺リンパ組織の萎縮、血圧の上昇、体温の上昇、血糖値の上昇、神経活動の上昇、筋緊張の増加などが見られます。
生体の適応現象が始まる時期と位置づけることができるでしょう。
ストレスが続くと適応反応は抵抗期に入ります。この時期は持続するストレッサーと抵抗力とが一定のバランスをとっている状態ですので、適応現象が安定します。生体防衛反応が完成された時期と位置づけることができるでしょう。
しかし、適応を続けるにもエネルギーが必要です。このエネルギーを適応エネルギーと呼びますが、ストレスが持続した結果これが消耗すると、適応力が徐々に低下していき、疲憊期に入ってしまいます。
疲憊期では獲得された抵抗力も失われ、再びショック相に似たあらゆる兆候を示すことになります。体温の下降、胸腺・リンパ節の萎縮、副腎皮質の機能低下などかが起こり、ついには死に至ることになります。
身体が局所的に傷害を受けたときの、その部位の反応も全身適応症候群とほぼ同様な経過をたどるとされています。これを局所適応症候群と呼びます。
ストレッサーstresserは物理的化学的ストレッサーと認知的ストレッサーに分類することができます。
ストレッサーの分類については、いろいろな方法が存在しています。ここで紹介する方法はさまざまな分類法を私なりにまとめてみたものです。
「寒冷」「高熱」「気圧の変化」などの環境因子や、「外傷」「熱傷」などの傷害、「振動」「騒音」などが物理化学的ストレッサーに分類されます。
例えば、極度に寒い場所では、脳の視床下部にある体温調節中枢の失調を来し、自律神経を介した熱の保持・拡散に関する機能障害を起こし、さまざまなストレス状態を引き起こします。
あるいは熱傷、外傷などではそれらのストレッサーにより直接受傷した部位だけではなく、全身的反応が併発します。
このストレッサーは2)の認知的ストレッサーにかなりの影響を受けています。
禅の僧侶は「心頭滅却すれば火もまた涼し」といって、熱いという刺激も気の持ちよう(認知の仕方)によってあたかも熱くないものであるかのように捉えることができると説いています。
刺激に対する認知の仕方がストレッサーとなってしまうものです。自己の感情、人間関係、職場のトラブルなどがこれに当たります。
本人が解釈したり、意味づけしたりすることによって起こるストレッサーなので、認知的ストレッサーと呼びます。
人間の持つ感情のうち、不安、緊張、恐怖、怒り、悲しみ、喜びなどは情動と呼ばれています。これらは、感情の激しい動きを表すものです。
情動は視床下部でつくられ、大脳辺縁系で調整されていると考えられています。ですから、例えば激しい怒りを覚えて、情動が激しい変化を起こすときには、自律神経および内分泌系を統合している視床下部に大きな影響を与えることになります。
このような、情動の変化が心理的ストレッサーとして働いて起こすストレスを情動ストレスと呼びます。
表 1 恒常機能を支える自律神経系の各器官に及ぼす影響
副交感神経系 | 各器官 | 交感神経系 |
収縮 | 脳血管 | 拡張 |
収縮 | 瞳孔 | 拡張 |
分泌刺激 | 唾液腺 | 減少 |
収縮 | 末梢血管 | 拡張 |
収縮 | 気道 | 開放 |
遅くする | 心臓鼓動 | 促進・強化 |
弛緩 | 立毛筋 | 収縮 |
減少 | 汗腺活動 | 増加 |
収縮増加 | 胃 | 収縮減少 |
分泌減少 | 副腎 | 分泌刺激 |
運動の増加 | 消化管 | 運動の減少 |
収縮 | 膀胱 | 弛緩 |
弛緩 | 生殖系 | 興奮 |
自律神経系というのは、内部器官、例えば内臓などの働きを自動的に調整する重要な神経系です。その働きは大きく2つの系統に区分されます。
一つは交感神経系と呼ばれるもの、そしてもう一つはそれと反対の働きをする副交感神経系と呼ばれるものです。
これらの神経系を簡単に位置づけると、交感神経系は活動に向かう動き、すなわち向活動性(エルゴトロープ)の働きを受け持ち、副交感神経系は主にエネルギーを蓄える、向栄養性(トロホトロープ)の活動を行っているといえます。
ともに視床下部からの命令によって、それぞれが独自の作用を発揮しながら、恒常性を維持しようとします。
前述した情動変化などのストレッサーが加わると、まずは交感神経機能亢進がみられるのですが、刺激の性質や時間的経過によって副交感神経の機能亢進をきたすこともあるそうです。
情動興奮による自律神経機能は、おおむね以下の4つのパターンに分類されるそうです(山下、1979)。
(1)急性の驚愕・恐怖の際にみられる交感神経興奮
(2)比較的長時間持続する不安・緊張に伴う交感・副交感神経機能の同時亢進
(3)感情の平穏な休息時における副交感神経の相対的機能亢進
(4)失望・憂鬱、悲哀に伴う交感・副交感神経両機能の低下
内分泌系はストレス時、自律神経とともに重要な役割を果たしています。内分泌系の制御中枢は自律神経と同じく視床下部であることが知られています。
ストレッサーは視床下部から下垂体前葉に刺激を与え、下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌し、副腎皮質より副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)を分泌させます。
このグルココルチコイドは、グリコーゲンの合成促進、タンパク質異化作用、抗炎症作用、過剰免疫反応の抑制などを司ります。ただし、1つ1つの作用にはまとまりがなく、ある特定な生理機能を行うために集約されたものではありません。
一方、ストレスにより副腎髄質では神経伝達物質であるエピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)など、カテコールアミンと呼ばれるものの分泌増加がみられます。つまりこれは自律神経系との連動を示すものではないかと考えられています。
善玉ストレス・悪玉ストレスと呼ばれる場合もあります。
前に、ストレッサーとは、生体に対する有害因子であると述べましたが、一方でセリエはストレスには良性ストレス(ユウストレス)と悪性ストレス(ディストレス)があるということも指摘していました。
例えば、運動によるストレスです。運動を行うと負荷が刺激になって体はさまざまな反応を起こします。しかし、それが適度であった場合爽快感を感じますよね。これは良性ストレスの代表的なものといえるでしょう。
逆に、不快になったり病気を誘うストレスもあります。これらは悪性ストレスと呼ばれるますが、一般的にストレスというとこちらを指すことが多いようです。
ストレスを量の上で分類すると、過剰ストレス、過少ストレス、適量ストレスの3種類になります。
過剰ストレスの多くは、病気や不快感など、害をもたらします。
毎日何の緊張もなく、頭や体を働かせる必要もなしにただ漠然と過ごしていると、人の心身を鈍らせ、退化させてしまいます。
人間にとって適量のストレスは必要不可欠です。適量のストレスは私たちの行動を適度に活性化して、快適で張りのある生活をもたらすでしょう。
心理的・生理的に最も効率の高い状態をもたらす良性ストレスと考えても結構です。
体に全身適応症候群というストレス反応が起こるのであれば、心にも似たようなストレス反応が起こることも考えられるのではないでしょうか。
なぜなら、たいていのストレス疾患には精神的要素がつきまとっているからです。「病は気から」という言葉があるように、弱気な人は病気に負けやすいし、病気に対する打ち勝つ気力の強い人はかなりのレベルで病気に立ち向かうことができるということについてはあなたも聞いたことがあるでしょう。
心のストレス反応の大部分は、全身適応症候群でいう抵抗期に当たると考えられるそうです。
「気力」「活力」は心の抵抗期としての防衛反応を含んでいるといえます。この力がしっかりしている限りは基本的に体のストレス反応の進行を遅らせることができると考えられます。
では、心のストレスにも疲憊期はあるのでしょうか? それは「うつ状態」に匹敵すると考えられます。
ストレッサーがあると身体反応が起こることは知られていますが、同時に心にも波紋が投げかけられます。
ストレッサーを受けると抵抗期、疲憊期の区別なく、心の状態はその活動性を低めやすいのだそうです。もちろん、あくまでこれはうつ病とは異なり、正常範囲の抑うつになります。
いずれにせよ、身体的なストレス、心理的なストレスには密接なつながりがあり、様態は異なっていても別々に考えることは難しいと思います。
五官から入る感覚刺激のすべては、大脳皮質で統合され、知覚となります。
普段の生活の中で私たちはさまざまな感覚刺激を受けていますから、大脳皮質には常に一定の緊張があるはずです。
そこで、この感覚刺激をなるべくすべて遮断して大脳皮質への刺激を最小にしたらどうなるか、という実験がアメリカの心理学者ヘッブによって行われたことがあります。これは、被験者を光も音も臭いもない特別に工夫された実験室に一定時間拘束するという実験でした。
この実験の結果、被験者は一様に、80~90時間経過したあとストレッサーに対する抵抗力を失ってしまう、ということが分かりました。
その状態では人の語る思想などがそのまま被験者の心に入り込んだあと定着してしまうという極めて恐ろしい状況になるのだそうです。
これはなぜかというと、無ストレス状態に慣れることによって、外からの情報に対して無力になっているからだと考えられます。
このような状態にあるときにストレッサーを与えるとそれがそのまま取り込まれてしまうことになり、放っておくと突然身体にストレスによるさまざまな諸症状が生じ、被験者は苦しみ出すことになります。これは疲憊期がいきなりくるようなものなのだそうです。
私たちがもしストレスがない状態にさらされた場合「心のストレス反応における警告反応期と抵抗期がなくなり、体が簡単にストレッサーに侵されてしまう」と結論付けられるでしょう。
各種ストレスとさまざまな疾患に深い関係があることは、あなたもすでにご存じだと思います。
この項では、循環器、消化器、呼吸器、神経筋、その他の各項目に分けて疾患を紹介します。
狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患は、ストレスによる影響にとても深い関係があることが知られていますね。ストレスは、高血圧、肥満、喫煙、糖尿病などと並ぶ冠動脈疾患のリスクファクター(危険因子)にあげられます。
過剰な情動ストレスが交感神経の緊張を高めると、エピネフリン、ノルエピネフリンの分泌が高まり、冠動脈の攣縮が起こります。さらに血液の粘りけが強くなり、血栓という血管を詰まらせるものが発生しやすくなるのです。
また、血清中のコレステロールを上昇させることによって血管内壁がへのコレステロール沈着が起こりやすくなることも考えられます。結果的に血液循環が悪くなり、冠動脈の硬化や閉塞が起こってしまいます。
このようなさまざまに絡み合った事情が冠動脈疾患を発生させてしまうのでしょう。
高血圧の原因は極めて多様で原因がはっきりしないものがほとんどですが、情動ストレスもその一因とみなされています。急激な緊張などで一時的に血圧が上昇することもあれば、持続的なストレスで交感神経の緊張、副腎皮質ホルモンの過剰分泌をきたすことで進行性の高血圧症に発展していくこともあります。
騒音環境、夜間勤務など、ストレスの多い場所で慢性高血圧の発生頻度が高いが知られています。
心臓は情動ストレスによる症状が非常に現れやすい器官で、狭心症や不整脈などの疾患がなくても、動悸・息切れ・胸痛につながることがあります。
神経症のうち、特に心臓に対する症状が主体となるものを心臓神経症と呼びます。不安・緊張・興奮などの情動ストレスが関与していますが、几帳面、完全主義の人ほど起こりやすいとされます。
ストレスが消化器に与える影響はあなたもよくご存じでしょう。消化器は情動ストレスによる影響をうけやすく憂鬱・悲しみ・怒り・不安などにより、食欲不振や吐き気、胃痛などが生じます。
情動ストレスが関与する消化器疾患には、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、精神性嘔吐症、慢性膵炎などがあげられます。
また、うつ病の身体症状として食欲不振、やせ、便秘などの胃腸症状(機能的疾病)が起こります。このような身体症状が前面に出たうつ病を仮面うつ病と呼んでいます。
胃・十二指腸潰瘍の原因は、胃酸分泌、胃粘膜の抵抗力などのバランスの崩れにあると考えられています。
気管支喘息、過換気症候群などがあげられ、症状としては呼吸困難感、胸部の圧迫感などが臨床上よく見られるそうです。
副交感神経優位のときに気管の狭窄、粘液の分泌過多などが引き起こされることから、ストレス状態が長く続くことによって自律神経の機能失調をきたし、発作が起こりやすくなるとされています。
気管支喘息の多くは、アレルギー性、感染型に大別されているますが、そのどちらにもストレスが多大な影響を与えていると考えられます。乾布摩擦、冷水浴水泳などが有効とされるのは自律神経の反応性を正常化する効果があるためです。
不安や緊張から呼吸数が増え、過換気症候群となって血液中の二酸化炭素分圧の低下および酸素分圧の上昇をきたし、呼吸性アルカローシスとなります。
呼吸性アルカローシスは血液が極端にアルカリ性に傾いた状態です。その結果、手足のしびれ、痙攣、意識障害などを引き起こします。
一般にはヒステリー、強迫傾向の性格を有する人に多いとされていて、その治療には心身の安定とリラックスが効果的なのだそうです。
ストレスが関連する疾患としては、筋収縮性頭痛、頸肩腕症候群、書痙、チック、眼瞼痙攣症などがあります。どの疾患でも筋肉の過度の緊張や持続的な収縮により引き起こされるものと考えられています。
これらの疾患は、性格的には頑固、几帳面な人、さらに長時間にわたって同一姿勢を保つ職種の人に多く認められるのだそうです。
上記の症状、疾患の緩和には、適度の休息と症状に応じた規則的な運動が効果的であるとされています。
また、ストレスの影響を受けやすい神経疾患としては、発作性回転性めまい、耳鳴り、吐き気などを主症状とするメニエールMeniere病や偏頭痛が代表的なものとしてあげられます。
その他、ストレスによって悪化、慢性化などの影響が見られる疾患として、バセドウBasedow病、神経性食欲不振症、糖尿病、生理不順、心因性頻尿、じんましんなどがあります。
現代社会においては、急激な生活環境の変化に伴い、職場や家庭でのストレスが増大していることが考えられます。
ここでは、テクノストレスと家庭内でのストレスに分けて解説してみます。
新しいタイプのストレスとして最右翼となるのが、このテクノストレスでしょう。
日本でもOA化、コンピュータ化が予想を上回る速度で展開されていることはあなたもご存じでしょう。仕事や生活を取り巻く環境の大きな変化がストレスの大きな原因になっています。
OAの操作によって起こるさまざまな障害のことをVDT障害と呼びます。これには眼精疲労や頸腕症候群などがある。
1984年、クレーグ ブロードによる『テクノ ストレス』という著作が話題になりました。この中でブロードは人間対コンピュータの間に2つの病理現象があることを指摘しています。「テクノ依存症」と「テクノ不安症」です。
テクノ依存症とは、コンピュータと深くかかわり合う中で、人間の考え方や性格が機械的・コンピュータ的になってしまうために通常の人間関係に問題が起こってくる症状のことです。
これには痛みなどの症状がないため、発見が遅れやすいとされます。私自身ICOのコンテンツ制作のため、コンピュータと向かい合う機会が多くなってきていますが、注意しなければならないと思います。
コンピュータに接して労働する際に起こってくる精神的疲労などをいいます。コンピュータ恐怖症と言い換えられることもあります。
ボブ リーンによるテクノ ストレス解消法をあげておきます。
(a)仕事の合間に確実に小休止をとる。そしてその間、自分のことを考えたり、仲間と話したりすること。
(b)帰宅する20分前には仕事を止め、家族の顔などを思い浮かべること。
(c)未解決な問題は、要点を書き出すなり、日記につけること。頭の中にいつまでも持ち込んでいてはいけない。
(d)仕事の最中に、できるだけ感情をこめて「私」という言葉を多用すること。
(e)自分の1日の中で、仕事にどのくらい時間がかかり、仕事以外のものに気分転換するまでどのくらいの時間がかかるか確かめてみる。2時間以上かかるのであれば要注意。
(f)仕事以外に絵を描いたり、手芸をやるなりして、別の物で自分を表すように努力すること。
家庭における新型ストレスを分析してみると、核家族化、主婦の社会的進出がその背景にあることが考えられます。
子育てによるストレスも以前に比べると増大していることが考えられるでしょう。核家族化は、若い母親が子育て経験者による適切なアドバイスを受ける機会を失わせています。このような、励ましや支えが得られないという環境がストレッサーになるものと思われます。
そのほか、高齢化の進行も原因とストレッサーにつながっているのではないでしょうか? 家庭内の老人扶養、老人痴呆に対するケアなどの問題も、家庭内のストレスを増すことにつながっていくのかもしれません。