ラウンジ
中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

筋肉はそうかんたんにつかない

「私って筋肉つきやすいから」
「筋トレすると筋肉がついちゃう」
「スケート選手みたいなフトモモはイヤ」

「レジスタンス エクササイズ(筋力トレーニング)」をフィットネスプログラムに含めようとするときに、実に多くの女性が上のような不安をあらわにします。

しかし、ここはひとつ、冷静になって考えてみませんか?

いままで、わずか2-3週間筋トレを体験された、それもひとりやふたりではない数のかたがたが、

「もう筋肉がついちゃって」

いう感想を述べられました。

しかし、筋肉というのは、こんな短期間で太くなるはずはないのです。

私たちの筋肉は、当初、神経と筋の関係を改善して、外からくる刺激に対応しようとします。つまり、その約1カ月間にみられる急速な筋力の向上は、筋肉が太くなったことによって起こったものではなく、神経・筋の関係が改善されたことによって起こったものなのです。

「筋肉がついちゃった」ように感じられる原因としては、

  1. 先入観
  2. 筋肉の炎症や張り
  3. 筋肉をつくる筋線維内のエネルギー源の増加

などによるものだと考えられます。

筋肉が太くなることによって筋力が高まるのは、1カ月を過ぎたころから。ということは、わずか2-3週間のトレーニングで筋肉がつく、ということはまず考えられないということになりますね。

そして、筋力トレーニングを長期間続けたとします。そして、あなたは

「スケート選手のようなフトモモ」

を獲得することはできるでしょうか? もちろん実現できる人もいるでしょうが、それはかなり難しいことなのです。

というのは、少なくともスケート選手のかたがたの場合、

「スケートで選手としていくための遺伝的な素質」

を持ち合わせていると考えられるからです。

まず、スケート選手たちと同じフトモモを獲得するためには、遺伝的な素質が必要となることがわかります。

次に練習量です。スケートの選手たちは、その記録を伸ばすために、いったい1日にどのくらい練習を積み、また生活にどれだけの注意を払っていることでしょう? 果たして、健康目的に行うわずか数十分の筋トレで、彼女たちのようなフトモモになれるのでしょうか?

ただでさえ、女性の場合、筋肉をつけるのに重要な役割を果たす「テストステロン」という男性ホルモンの分泌量が少ないのです。さらに、筋肉をつけるのを阻害する女性ホルモンの分泌量は多いのですから、男性でもつけるのに苦労する筋肉を、女性が簡単につけられるとは考えないほうがよいでしょう。

私の家内は、トレーニング2年目でベンチプレスの東京都記録をつくったり、かなり遺伝的には有利だと思うのですが、毎日毎日激しいトレーニングを繰り返しても、筋肉はなかなか太くなりませんでしたよ。大会時は44kg、オフの時は51kgくらいでしたが、一般の51kgの人と比べるとずいぶん細く見えたものです(海外の女性ボディビルダーの中には、男性のような筋肉を誇る人がいます。しかし、それは特殊な世界であり、筋肉増強剤が日常的に使われる環境があるからです)。

ただ、幼少時からスポーツをハードに長期間やっていた女性の場合は、遺伝的にそのスポーツ向きの体質を持っているケースも多く、当然、女性としては筋肉が発達している、ということもあります。

しかし、筋肉は使わなければ、完全に前のレベルまでに戻るというわけではないようですが、「おとろえ」ます。ですから、学生時代にハードにトレーニングを行っていても、ブランクがあれば、そのまま筋肉が同じように残っている、ということはありません。

「ずっと筋肉がついちゃったままで」

と嘆くかたもおられますが、体の中では

  1. 運動をやめると筋肉は縮小する
  2. でも食欲はあまり変わらないので、必要以上の食べ物をとる
  3. 筋肉の隙間に脂肪がたまっていく
  4. 結果として筋肉がおとろえたようにはみえない

というようなことが起こっていると考えられます。筋肉が減ったぶん、筋肉内の脂肪が増えているので、あまり筋肉が減ったようには見えないわけですね。

最後に、上にもあげたように、遺伝的に筋肉づくりに有利な条件をそろえ、女性でもかなりのレベルまで筋肉を発達させることができる人はいます。しかし、その裏側には、想像を絶する努力が払われていることをお忘れなく。

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