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中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

サイクルトレーニング

この文書はICOライブラリの文書に加筆訂正を加え、少し具体性をもたせたものです。

  1. サイクル トレーニングとは?
    • スポーツ競技のコンディショニングによく使われるトレーニング システムの一つです。競技の時期に最高のコンディションを実現できるよう、コンディショニング プログラムを時間(期間)で区切って、競技に役立てようとするものです。
    • スポーツ競技においては、その種目によって重視される体力要素が大きく異なっているので、まずそれを見極めなければなりません。そして、次にその体力要素を試合で存分に生かせるように、段階的にプログラムを組み上げます。
    • 多くのスポーツで、試合の集中するシーズンがはっきりしているので、ここでは1年をいくつかの段階に分ける年間スケジュールということを前提に解説してみます。種目によっても、あるいは研究者や指導者の考え方によっても区切り方は異なります。
  2. サイクル トレーニングcycle training
    1. オフ シーズンoff season
      • この時期は、専門スポーツに必要とされる基本的な体力をつけることに重点をおく時期であり、基本的に一般的過負荷でのトレーニングのみを行います。一般的過負荷とは、一般のウエイトトレーニング種目(例・ベンチプレス、スクワット)によって得られる運動負荷を示しています。
      • 期間的な目安をあげると、前シーズン(試合期)が終了した数週間後から次のシーズンが始まる1~2ヶ月前くらいまで続くのが一般的であるようです。
      • オフ シーズンの最初のサークルは、より強いトレーニングに対して体慣らしを行うため、比較的トレーニング強度を低く設定しなければなりません。15-20RM(15-20回ようやく持ち上がるような重さ)程度から始めるのが安全だと思います。
      • 次のサークルでは徐々に重さを増やし、セット数、回数を減らして筋力を高めるより強いトレーニングに移行していきます。最終的には8RM程度(8回ようやく持ち上げられる重さ)を目指すことが望まれます。
      • この時期にスポーツ種目に必要な体力水準を身につけ、イン シーズン(シーズン中)に問題を残さないように解決しておくべきでしょう。
    2. プレ シーズンpre season
      • スポーツ種目によっても異なりますが、この時期はイン シーズンに入る直前まで1~2ヶ月の期間がとられます。
      • オフ シーズンに身につけた体力要素を試合で生かせるようなプログラムに主眼を置かなければならなくなります。
      • 同時に技能(スキル)練習も行わなければなりません。ストレングス トレーニングは専門種目により関係の深い種目が選択されるようになってきますが、この中に専門的過負荷を含んでも良いでしょう。専門的過負荷とは、その競技種目に特化されたトレーニング種目によって得られる負荷を示します。
      • もし、種目がパワー、スピードを重視するものであれば、瞬発力を高めるようなエクササイズ(ハイ クリーンなどのパワー系エクササイズ)も多用していかなければなりません。ただし、技能練習にも多くの時間を割かなければなりませんので、量は少なく、強度は高く、というのが基本になります。
      • プライオメトリックスも、筋力を瞬発力に生かすために役立つエクササイズで、この時期に採用してもよいのですが、基本的な筋力が育成されていることが前提になります。プライオメトリクスとは、いったん引き伸ばした筋を急速に収縮させるエクササイズです。詳しくは「ICO Library」をごらんください。
      • プレ シーズンの終わりには、各選手がその競技に必要とされる体力を十分につけ、それを試合に直結させられるような状態になっていなければなりません。このように、全身のコンディションを最も高めた状態まで持っていくことをピーキングpeakingと呼びます。種目によっては2-3RM(2-3回しか持ち上げられない重さ)でのトレーニングが必要になる場合もあります。
    3. イン シーズンin season
      • この時期はプラクティスおよび試合に力を入れる時期であるため、ストレングス トレーニングに費やされる回数・時間は少なくなるでしょう。
      • この時期のストレングス トレーニングは、オフ シーズンやプレ シーズンに高めた筋力を維持する目的で行われます。専門競技に極めて関連が深いトレーニングでなければならないので、専門的過負荷が用いられたりしますが、基本的なウエイト トレーニング種目も行っておくべきでしょう。なぜなら基礎的な筋力が低下する恐れがあるからであり、このような状況に陥ってしまうとシーズンの長いスポーツでは、シーズン後半の不調を招くことにつながります。
      • この時期のトレーニングは、比較的高い強度で、短時間に集中して行うことが基本となります。ただし、この時期のストレングス トレーニングはあくまでもピーキングされた体力水準をなるべく維持することが第一の目的です。トレーニングの疲労がプラクティスや試合に影響を与えるようであってはなりません。疲労状態でのプラクティスが長いスランプの原因につながることがあります。疲労をした状態でプラクティスを行うと、本来要求される細かい筋の制御が大雑把な制御に置き換えられることがあるからです。
    4. ポスト シーズンpost season
      • シーズンが終わった直後の時期のことです。積極的な意味での休息を入れるのが望ましいといえます。1年間のスケジュールで残された体の疲労には相当なものがあることが予想されるからです。特に結合組織の疲労は抜けにくいといわれるので、体をフレッシュな状態にし、次の期のトレーニングに新たな気持ちで臨むため、十分な休息が必要となると考えられます。

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