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栄養士:石川眞弓( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

ビタミン vitamin

ビタミンの特徴

ビタミンは体にとってほんの微量ではあるが必要欠くべからぬ一連の化合物です。

それ自身がエネルギー源になったり、体組織を合成する物質にはなりませんが、正常な細胞の生理的代謝や成長、そして組織の維持に必要な物なのです。

例えばエネルギーとなる炭水化物や脂質を摂ってもビタミン無しには直接エネルギー源に換える事ができないため、脂肪として蓄積してしまいます。

ビタミンは体が自ら作り出すことができないため、必要な量は常時補給されなければなりません。

ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあり、水溶性は過剰な摂取量は体外に排泄されるので害はありませんが、脂溶性は1日の必要以上の10倍以上の量を摂取すると害をもたらす事があります(但しVEは例外で報告無し)。

代謝酵素を助けるので補酵素と呼ばれる物もあります。

 

ビタミンの働きと必要量

種別 名称 必要量/日 役割 食品 過剰症 欠乏がち
脂溶性 VA 2000IU 蛋白質の吸収や利用に不可欠である。消化吸収されたアミノ酸を結合させ体が要求する蛋白質分子を合成する過程に重要な役割を果たす。 レバー・うなぎ・緑黄色野菜・緑、黄、橙色のフルーツ・卵黄 頭痛・悪心・嘔吐・皮膚の剥離
VD 100IU カルシウムやVAの吸収を助ける。食事で充分なのでサプリメントは避けた方が良い。 魚油・卵黄乳製品 嘔吐・下痢・腎臓障害・皮膚のかゆみ・いらいら  
VE 8IU 酸素の利用を高め、持久力が増す。 植物油・緑黄色野菜レバー・卵黄・小麦胚芽    
VK 未定 内出血の防止。サプリメントは必要なし レバー卵黄・海草類・野菜・ヨーグルト 黄疸  
水溶性 B1 (サイアミン) 0.8mg 細胞内で糖からエネルギーを生み出すのに重要な役割を果たすが、多く供給する食物は少ない。 豚肉・レバー・小麦胚芽・ひまわり種  
B2 (リボフラビン) 1.2mg 3大栄養素の代謝に役立ち、細胞にエネルギーをもたらす。細胞の組織蛋白質を作りだし成長のもとになる。紫外線やアルコールに弱い。 乳製品レバー緑黄色野菜・魚・卵  
V3 (ナイアシン) 15mg 自然の性ホルモンを作り出すのに必要。日常の食品に多く含まれているので欠乏することは少ない。      
V5 (パントテン酸) 10mg 糖分や脂肪代謝に補酵素として働きエネルギー生産を行う。又低エネルギー状態から体を回復させる。アルコールやカフェインに弱い。 肉内臓・牛乳・卵黄緑黄色野菜・ひまわり種    
V6 (ピリドクシン) 2mg 蛋白質代謝には不可欠でプロティンやアミノ酸の利用を助ける。貯蔵や加工に弱い。 レバー・肉、魚介類・緑黄色野菜・牛乳・小麦胚芽    
V12 (サイアノコバラミン) 1.5mg 葉酸や亜鉛と共に、核酸の合成や筋細胞の分裂・成長に必要。      
葉酸 400μg アミノ酸と核タンパク代謝の補酵素として働き、細胞の形成・増殖や再生に必要。又VB12やVCの働きを助ける。 レバー・卵黄・小麦胚芽・緑黄色野菜・イースト・アボガド    
ビオチン 200μg 脂肪合成、アミノ酸代謝、グリコーゲン合成における補酵素として働く。 レバー・牛乳・卵黄・新鮮野菜    
パラアミノ酸安息香酸 未定 蛋白質の利用を助ける。太陽光線などの害を防ぐ特徴もある。 レバー・小麦胚芽    
VC 60mg 筋肉が脂肪酸をエネルギー源として利用するのを助ける。グリコーゲンを節約保存する。酸素利用を助ける。筋肉に乳酸が蓄積するプロセスを送らせる事で疲労を送らせ持久力を高める。これだけの働きがあるのだから意識して大量に摂るべきである。 ほうれん草・苺・柑橘類・ポテト・トマト・ブロッコリー・    
イノシトール・コリン 未定 脂肪やコレステロールの蓄積を自然に防ぐ働きがある。神経伝達物質アセチルコリンの形成にも必要。 レバー・イースト・小麦胚芽    

 

ビタミンの重要性

 ビタミンはそれ自身が体を作る栄養素ではありませんが3大栄養素が効率よく代謝するために不足してはならない不可欠な栄養素で貯蔵されないため毎日摂らなければいけません。

 ごく微量で、他の栄養素の働きをスムースにする潤滑油のような作用をします。

 ビタミンには薬理作用に近い等の理由でビタミン様物質と呼ばれる物もあり、これらも広い意味でのビタミンの仲間です。

 国民栄養調査では調理による損失が考慮されていません。VCは季節による変動による含有量の変動、又ストレスによる消耗も激しいのです。

 その上国民栄養所要量の100倍摂っても安全で多量摂取が推奨されています。

 特に近年の食生活に加え、ストレスやDIETにより日本人はビタミンBに対しては常に欠乏状態にあると言われています。

 VB1,2 は糖質の代謝を司り、B6は蛋白質の合成に不可欠です。

 コリン・イノシトールについては脂質の分解に不可欠なのです。

 これらこれらを食物から過料に摂るのは非常に困難です。

 そのため、ドリンクやサプリメントで充分補って下さい。

種 別 通 称 化学名 注目すべき役割 所要量/日 お勧めしたい人
脂溶性ビタミン VA レチノール 活性酸素の害を防ぐ 2000IU-20000IU 肌がかさつく人
VD カルシフェロール VA,Ca,Pの吸収補助・筋肉の機能強化 100IU-1000IU 歯や骨の弱い人・高齢者
VE トコフェロール 過酸化脂質を分解し膜を活性酸素から守る・酸素の利用効率を高める 8mg-800mg 冷え性の人・がん、心筋梗塞、脳卒中を予防したい人
VK フィロキシン 骨へのCa沈着補助 1.5μg/kg-75μg/kg 骨粗鬆症の予防・治療
水溶性ビタミン VB1 サイアミン 糖質の分解促進 0.8-80mg 疲労感・食欲不振・神経過敏症・運動量の多い人・煙草・お酒が多い人(VB1の消耗)
VB2 リボフラビン 脂質の代謝を促進し過酸化物質を分解 1.2mg-120mg DIETしたい人・脂肪摂取の多い人・不足しがちなビタミン。
ニコチン酸 ナイアシン インシュリンの合成・中性脂肪の低下 1.4mg-70mg お酒をよく飲む人(アルコールの2日酔いのもとであるアセトアルデヒドを分解)
パントテン酸   副腎皮質ホルモンの合成・善玉コレステロールの増加 10mg-1000mg お酒をよく飲む人(アルコール、カフェインで消耗する・多めに摂りたいビタミン)
VB6 ピリドキシン 蛋白質代謝の主役・脂質の代謝に不可欠 2mg-100mg 蛋白質を多く摂る人・脂肪肝を予防したい人
VB12 コバラミン 赤血球の産生 1.5μg 食事が野菜に偏りがちな人
VB13   肝障害・老化の予防 ビタミン様物質で未定  
VB15   肝機能を高める・疲労の回復を高める ビタミン様物質で未定  
VB17   ガン細胞の攻撃 ビタミン様物質で1gまで  
葉酸 プテロイルグルタミン酸 赤血球の産生・蛋白質と核酸の合成 200μg-10mg 飲酒量の多い人・野菜嫌いな人
イノシトール   脂肪とコレステロールの利用・肝臓への脂肪貯蔵防止 500mg 脂肪の摂取量が多い人・脂肪肝、動脈硬化を予防したい人
コリン   脂肪とコレステロールの利用・肝臓への脂肪貯蔵防止 500mg 脂肪の摂取量が多い人・脂肪肝、動脈硬化、高血圧を予防したい人
パラアミノ安息香酸   蛋白質代謝の補助・白髪、しわの予防 未定 皮膚の老化や白髪を予防したい人・お酒を多量に飲む人
ビオチン   炭酸ガスを使う反応の補助 100μg-10mg 肌荒れ、白髪、はげが気になる人
VC アスコルビン酸 コラーゲンの合成・コレステロールの低下 50mg-5g  

ビタミンの重要性に関する理論的根拠

<<ビタミンB1(チアミン)>>

糖質の代謝に密接に関係し、重要なカルボキシラーゼの働きを助けます。

  1. グルコースが解糖系で分解を受けて生じるピルビン酸をアセチルCoAに変える段階を触媒する脱水素複合体の構成員で、この段階は体内での物質の流れを左右する大切な分岐点でもあります。
  2. α-ケトグルタール酸ウォーキングサクシニルCoAに変える脱水素複合体があり、その中のカルボキシラーゼ成分を助ける酵素の成分ともなっています。

<<ビタミンB2(リボフラビン)>>

細胞内の酸化還元反応の触媒をする酵素の働きを助けます。この種の酵素は相手から水素原子を奪って相手を酸化すると共に、補酵素に水素原子を与えて還元型補酵素に変えます。

VB2が代謝の上で重要なのは

  1. ピルビン酸の脱水素酵素の補酵素として
  2. TCAサイクル内のα-ケトグルタール酸脱水素酵素の補酵素として
  3. TCAサイクル内でコハク酸をフマル酸に換える
  4. 脂肪酸がβ酸化を受けアセチルCoAに分解される途中で働くアシルCoA脱水素酵素の補酵素として
  5. グリセリン3-リン酸脱水素の補酵素として機能している

からでi.からv.の電子は結局電子伝達系に渡され、この系を流れる際の生体内の通貨ともいえるATPが生産されます。すなわち3大栄養素のもつ化学エネルギーを解放して、その一部がATPの形に変換され円滑に働くのを助けるのです。

    <<ビタミンB6(ピリドキシン)>>

    酵素の作用でアミノ酸と結合し、アミノ酸の種々の反応を触媒します。

    1. アミノ基転移反応
    2. 脱炭酸反応
    3. 脱水反応(セリン)
    4. イオウの脱離(システィン)
    5. 芳香族アミノ酸の変換

    このビタミンはアミノ酸の代謝に広く関わっているのです。この多彩な反応を発揮するのはアミノ酸と結合する事によって種々の官能基が脱離しやすくなるためです。

      <<ビタミンB12(シアノコバラミン)>>

      メチル基の活性化と転移反応の補酵素であり、これはアミノ酸代謝というより核酸塩基の生合成に関与が大きいのです。

      特にビタミンB群はエネルギー代謝経路に下記のように働いています。

      ビタミンは運動能力にも関与し欠乏が2~4週間続くと運動能力は著しく損なわれます。

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