中原雄一(
21/10/20 Wed 22:43
更新)
最大酸素摂取量とガン
- 運動を習慣化されている方には朗報かもしれません。
1999年6月、アメリカ・シアトルでの「アメリカスポーツ医学会」で、「最大酸素摂取量の多い人はガンで死亡する危険性が低い」という報告が行われたのです。
- 最大酸素摂取量とは、「単位時間当たりに組織が酸素を取り込む最大の量」のことで、この値が大きいほど「全身持久力が優れている」と評価されます。
- この能力は、基本的に有酸素運動(体の中に酸素を取り入れながら長時間行うタイプの運動)を定期的に行うことで高めることができますが、今回の発表はこの値が高い方が「ガンで死亡する確率が低い」ことを示したとのこと。
- 被験者は、最大酸素摂取量の測定値に基づき、段階別に約1900人ずつの5グループに分けられました。その結果、以下のような結果が得られています。
グループ |
16年間の死亡者数 |
グループ1(最大酸素摂取量が最小) |
43 |
グループ2 |
31 |
グループ3 |
18 |
グループ4 |
11 |
グループ5(最大酸素摂取量が最大) |
7 |
- 上記の結果を見る限り、最大酸素摂取量が高いほどがんによる死亡者数が少なくなっています。
- ただし、がんに罹患・発病する危険性は年齢や生活習慣(喫煙・飲酒)、肥満度や疾患などの危険因子によっても変わってくるはず。それを補正したのが以下の表になります。
グループ |
がん死の危険度 |
グループ1(最大酸素摂取量が最小) |
1.00 |
グループ2 |
0.68 |
グループ3 |
0.46 |
グループ4 |
0.39 |
グループ5(最大酸素摂取量が最大) |
0.27 |
- 上記の結果から、最大酸素摂取量が高くなるにつれてがん死の危険性が低くなって行っていることが分かります。このことは、定期的な運動を行い、最大酸素摂取量を高めておくことが、がん死を予防する上で有効である可能性を示していると思います。
- 1990年代前半、「酸素を取り入れる量が多くなるほど体内での活性酸素の悪影響を受け、寿命を縮めたり、がんに罹患する確率も高くなる」というような説が注目されましたが、少なくともがん死に関しては、今回の調査では逆の傾向を示しました。
- 今後、「どの程度の運動をして、どの程度に最大酸素摂取量を維持しておけばよいか」というような指標が明らかになっていくのを期待したいところです。