減量のための手段として一般的によく行われる方法として、
「減食(ロー カロリー ダイエット)」と「運動(エクササイズ)」
があります。ここでは運動について考えてみましょう。
減量における運動の役割は、身体が消費するエネルギー量を高めることにあります。これについては、大きく二つの考え方があると思います。
減量のためのプログラムとしてレジスタンス エクササイズが採用される場合は、当然後者の考え方を理解していることでしょう。
レジスタンス エクササイズとは、基本的に筋に負荷(レジスタンス)を与え、筋が発揮できる力を高めるトレーニングのことです。目的からみれば、「筋力トレーニング」という呼びかたをしてもよいでしょう。
筋力増大は大きく2段階で行われます。
初期の段階では運動に参加する筋線維の数が増え、その次の段階では筋が肥大する=大きくなるのです。
筋が肥大すると、必然的にその筋の維持活動・収縮活動に使われるエネルギーが増大します。
基本的にはこれが筋力トレーニングの減量に対する効果といわれる部分だといえるでしょう。しかし、筋力トレーニングの減量に対する効果は筋肥大によるものだけではありません。もう少し細かく分析してみます。
つい最近まで、日本では「筋力トレーニングは運動中に脂肪を燃焼しないため、減量の効果はない」とされてきました。しかし、これらの意見は運動そのもののエネルギー消費のメカニズムに限定された論でしかないことが分かります。
これについては、"Shape-up!! Before Summer"の掲示板の中で、すばらしい質問がありましたので、ここで考証してみたいと思います。
「あるある大辞典」という番組で、
「赤筋は脂肪を燃焼できるが、白筋は脂肪を燃焼できない。だから、減量をするためには有酸素運動を行うべき」
という内容が放送されました。以下をごらんになれば、上記が誤りであることが十分に理解できると思います。
筋は「筋線維」と呼ばれる線状の細胞が複数束ねられて形成されています。この筋線維をみたとき、いくつかのタイプの線維があることが分かりますが、ここでは「速筋線維(FT線維)」と「遅筋線維(ST線維)」に大別しましょう。「あるある…」の「赤筋」「白筋」という分類は、厳密には間違いです。
これらの線維の配合は遺伝によって決定されていると考えられています。 従来、
「レジスタンス エクササイズでは速筋線維には効果が大きいが、脂肪をより多く使える遅筋線維には効果が少ない。だから減量には無意味」
といわれてきました。しかし、速筋線維は遅筋線維よりサイズが大きく、遊離脂肪酸の使われる率が高い安静時の代謝昂進に大きな役割を果たすのではないかと私は考えています。
また、速筋線維にも有酸素系代謝にかかわる「ミトコンドリア」や「ミオグロビン」が存在することを考えれば、遅筋線維より劣るとはいえ、脂肪を分解する能力が備わっていることは明らかです。
加齢に伴う筋線維の萎縮を見ると、圧倒的に速筋線維の割合が多いことが数々の実験で明らかになっていますが、これも加齢に伴う基礎代謝の減少にかなりの割合でかかわっているのではないでしょうか?(ただし、この種のテストでは、速筋線維と遅筋線維の「誤認」が往々にして起こるようですから、この結果は少々割り引いてみる可能性があるようです)。
また、現在まで分かっていることは「低負荷・低速度」の運動では遅筋線維が優先的に使われ、「高負荷・高速度」の運動では速筋線維が優先的に使われる、ということ。
"Shape-up!! Before Summer"のプログラムではかなり低負荷・低速度の運動が含まれますので、単に速筋線維だけでなく、遅筋線維も相当の割合で使われていると想像されます。この両方を刺激し、肥大させる方法として「ホーリスティック トレーニング」が有名です。
現在、スポーツ クラブにおいては、減量のための手段としてレジスタンス エクササイズを採用するところが多くなってきています。それは、上記のような理論によるところが大きいと思います。
もちろんそれらは有酸素運動の効果を否定するわけではありません。今でも多くのクラブが有酸素運動をメインに置いているようです。 それでは、
「レジスタンス エクササイズと有酸素運動の組み合わせはどうか?」
という意見が当然出てくるでしょう。これにもいろいろな考え方がありますね。「両者を組み合わせると効果が出るのが一番速い」という人もいますし、「両方を同時に同じ程度行うと、上記のような筋線維がどちらの運動に適応していいか分からず、中途半端な効果しか出ないのでは? 」という説もあります。
ダイエット(減食)を組み合わせるプログラムでは、「ただでさえ筋のキープが難しい状況なので」として有酸素運動を切り捨てているものもあります。私の場合は、総合的に考えたうえで、両者を組み合わせたプログラムを行うのがよいのではないかと思いますね。