まず、減量の話を始める前に、
「本当に減量が必要か?」
ということをもう一度確認してみましょう。
誤った認識による減量がどんなに危険なことか、はじめに理解しておいていただきたいと思います。
2000年になり、アクセス数が急増するとともに、減量に関する問い合わせを受けることも多くなってきました。その中でとても気になっていることがあります。
それは、すでにやせているにもかかわらず、
「やせたい」「あと5kgなんとかしたい」
という思いを切実に訴えてこられる10-30代の女性からのメールの割合が多くなってきていることです。
これらは一様に「盲目的」であり、
「自分は太っているからやせなければならない」
思い込んでおられる結果であると考えられます。
しかし、彼女たちはどうして「太っている」と思っているのでしょうか? 実際には「ご自分でも分からない状況」に陥っているようですね。
実際の指導現場でも、「やせる必要はない」というインフォメーションに対して、「でも太っているから仕方がないじゃない!」という感じの反応をする方々がおられます。
これは、ご自分の身体状況を正しく判定できなくなっていることによるのかもしれません(もちろん、頭で分かっていても、事実として認めたくない、という場合もありますよ)。
情報を提供する側にも問題がある場合が多いのですが、それらの情報をもとに、安易に減食を試してみたり、「減らせば減らすだけ早く減量が進むだろう」と勝手に判断して減量を行ってみる方が非常に多いですね。
このような行動を続けることで、摂食障害に陥る危険性が高まります。長期的な栄養の欠乏は、細胞の形成、ホルモンの形成、神経系の機能調整などに大きなダメージを与えます。
細胞の形成が妨げられることにもよるのでしょうが、大切な脳の萎縮の懸念もあるのです。
これらが原因で、「性格や判断力」にも支障を来し、結果として冒頭に挙げた「正常な判断力の低下」につながっている可能性は否定できません。
残念ながら、このような症状がある場合、すでにICOのプログラム提供対象外であり、医療関係者の手による治療が必要です。
少し前置きが長くなってしまいましたが、このコーナーでは、摂食障害に関する基礎的な情報をご紹介いたします。
摂食障害(Eating disorder)とは、食事をとる行動(食行動)の異常のことです。
ここでは、不適切な減量や減量行動と関係の深い、神経性食思不振症(Anorexia nervosa)と神経性過食症(Bulimia nervosa)について述べてみます。
この障害は一定の死亡率を持つ、非常に怖い症状です。厚生省のある予後調査では、以下のような結果が出ています。
調査数 | 治癒 | 軽快 | 不振 | 死亡 |
---|---|---|---|---|
143例中 | 33% | 48% | 13% | 6% |
この10年で患者数は5倍にも増加しているといいます。もちろん私は医師ではありませんし、実際のところは分からないのですが、ICOを3年続けてきて(2000年4月30日現在)、私にもその実感のようなものがあります。
この症状を治癒・改善するためには、医療関係者・患者本人・患者の家族の協力体制が必要です。
ある減量関連のパネルディスカッションに参加させていただいたとき、ダイエット(この場合減食)が摂食障害のきっかけであったとしても、その時の心理状態が大きな影響を及ぼすようで、家庭環境にも問題が潜んでいるケースが多いという指摘がありました。
このような問題をある程度長い時間かけて取り除くことも必要になってくるそうです。
まずは、減量を始める前、上記の内容をごらんになってください。そして、「肥満度判定プログラム」を実行してみて、本当に「やせること」「減量をすること」が必要なのか、よく考えてみましょう。