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中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

エネルギー計算の意義

はじめに

特に、民間療法的な減量法でよく見かけたり、あるいは耳にする言葉に、「カロリー(エネルギー)計算は意味がない」というものがあります。

これらの多くは、私が別のページで紹介した「ふとる」「やせる」というメカニズムまでを否定しているように聞こえることがあります。

「たくさん食べても太らない人もいれば、あまり食べなくてもやせる人がいる」

ということが彼らの「太る」「やせる」というメカニズムの否定の根拠になっているようです。

しかし、現実には、人間のエネルギーの入出力にはいろいろな要素が絡んでいるため、私たちが「実際に消費しているエネルギー」と「体が実際に体内に採り入れている栄養素」を正確につかむことが困難である、というほうが正しいのです。

それでは、エネルギーバランスを明らかにするのを難しくしている要素とは何なのでしょう?

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消化・吸収能力

従来、「人によっては消化・吸収能力が劣るから、たくさん食べてもやせるのだ」といわれてきました。確かに、消化器系に問題がある人の場合には、「たくさん食べてもやせる」のは事実です。

このようなケースでは、実際に口に入れた量がどの程度吸収されるのか、はっきりしないことになりますね。

しかし、いくつかの実験で、健康体では太る体質でもやせる体質でも、消化・吸収能力には差がない、といわれるようになってきています(だいたい摂取量の80-90%は吸収されるといわれます)。

さらに複雑なのは、健康体の人であっても、その日の体調によって、あるいは食べたものによって、実際に吸収される栄養素の量が変わってくる可能性があるということです。

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食品成分表

栄養素の摂取量を計算する場合には、

「食品成分表はあてになるか?」

という問題があります。

同じリンゴという果物であっても、作られた環境によって栄養成分は大きく変わりますし、商品が消費者の口に入るまでにどのくらいの期間が経過しているのかも影響してくるでしょう。 また、栄養士さんならお分かりかと思いますが、「食品成分表」では、日本人が口にするすべての食材が網羅されているわけではありません。このようなケースでは近い食材を用いて計算したり、あるいは無視するしかなくなります。

そのほか、市販の食品は次々と新製品が投入されています。このような食品の栄養素の成分を完全に網羅することは難しいことです。

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体脂肪の測定について

本来、肥満については、身長や体重だけでなく、体脂肪率で判断しなければならないことは、このページの最初で述べました。

しかし、実際には、その体脂肪率を測定するための手段が確立していないことが問題です。現在、一般家庭では生体電気インピーダンス法を利用した、簡便な器具が普及しています。

こういった器具が算出してくれる体脂肪率というのは、あくまで目安にすぎません。これらで測定した測定結果が男性で25%、女性で30%を超えていたからといって、即「肥満だ」と悲観するのはやめましょう。

現状では、得られた体脂肪率の結果だけでなく、BMIやサイズ測定など、さまざまな測定を組み合わせながら、評価していくことが最も望ましいといえるでしょう。

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消費エネルギー量の日ごとの変化

さらに、人が消費するエネルギー量は日によって変化します。 運動をした日は、運動によって消費したエネルギーが加算されるわけですから、それだけ消費量が多くなります。

それだけではなく、筋力トレーニングのような運動は、運動後に代謝が亢進した状態が続くことも多いので、さらに1日の消費量が増加することが考えられますね。

これらを求める各種計算方法についても、完璧といえるものはありません。一つの目安として利用するしかないのです。

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エネルギー計算の役立て方

ここまで述べてきたことを総合すると、「1日の消費量を仮定して、栄養計算による評価を行ったり、食事計画を立てることは意味がないのではないか」という気持ちが強くなった方もおられるかもしれません。

しかし、実際に食べたものを書き出してエネルギー計算を行ってみると、食事の傾向を見るのには非常に役立つことが理解できます。

たとえば、ある程度注意深く作成された栄養計算の結果から、「どの部分が無駄な食事なのか」「どれくらい活動量が足りないのか」「どの程度エネルギーをとっていれば体重が安定もしくは減少するのか」「所要量に対して十分な栄養素を取っているのか、あるいはとりすぎていないか」を知る手掛かりを得ることができます。

あとは実際の生活の中で微調整をしながら、役立てていけばよいのです。 また、慢性疾患の治療の現場などには不可欠のものでしょう。

本来はこのような栄養計算は栄養士の手によって行われるものですが、最近では一般家庭でも手軽に利用できるような「栄養計算ソフト」が市販されています。この種のソフトを、ある程度使い続けることでおおよその栄養素摂取傾向をつかむことは可能になるでしょう。ただ、専門家がそばにいないと、どのような献立が理想なのかを知るのは難しいですね。

ソフトウエアについては、リンクのオンライン ショップにいくつかの栄養計算プログラムを紹介したページを収録しています。

また、ICOの相互リンク先でもある「TOKIWA HEALTH UP CLUB」においては会員登録(無料)を行うことで、オンラインで食事分析を行うことも可能となっています。 ただ、これらもあくまで目安に過ぎませんから、くれぐれも盲信されませんように!

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