中原雄一(
21/10/20 Wed 22:43
更新)
疾病予防の考え方
はじめに
- 昔は「無病息災」といわれたものが現代では「一病息災」と言い換えられるようになり、誰でも1つ程度は何らかの不調を抱えながら、それらとうまくつきあう必要に迫られているといわれます。
- このような不調や疾患を抱える前に予防することの重要性が盛んに説かれるようになっていますが、これは「一次予防」と呼ばれるものです。
- ここでは疾病の予防活動の方法や段階について紹介してみましょう。
予防の段階
予防の方法
- 健康増進
- 現在のICOのテーマはこの部分に相当するといえるのですが、「疾患にかかる以前に、健康を維持するために行うさまざまな活動」を指しています。
- これらの活動は「非特異的」なもの、つまり、何か特定の疾患を防ぐためにとる手段ではありません。特定の疾患を予防するためにとられる方法は次の「特異的な予防」と呼ばれるものになります。
- ICOで紹介しているような運動種目を適度に行ったり、栄養学コラムの内容を実践することは、健康増進活動に当たるといえるでしょう。
- 特異的な予防
- これは特定の疾患を予防するための手段です。一番典型的な例といえるのは「予防接種」でしょう。
- 予防接種は、力を弱めた抗原を体内に注入して、抗体を作らせることによって、特定の疾病を予防する手段となります。
- 早期発見・早期治療
- よく、「がんの早期治療・早期発見!」ということがいわれますね。
- この活動は、不幸にして疾患にかかってしまったあと、それが医学的に診断できる段階になって、早期に発見し、治療をしようとするものです。「定期検診」がその例であるといえます。
- 早期発見・早期治療により、疾患の症状がひどくなることを予防するのです。
- 疾患・傷害程度の抑制
- 3.や4.とも関連してきますが、疾患に対して行われる治療活動そのものを指しています。
- 疾患が明らかになって、それに対する適切な治療を行うことで、疾患や傷害の程度を抑制することが可能になるため、これも予防活動の一環であると考えられているのです。
- リハビリテーション
- リハビリテーションとは機能回復訓練のことです。疾患などによって受けた傷害を回復させ、障害が残ることを予防する活動といえます。
個人の責任の重要性
- 日本の疾病構造は感染症から生活習慣病へ大きく変化しました。この生活習慣病(もともと成人病と呼ばれていた)はその名前の示す通り、主な危険因子はライフスタイルの中に潜んでいるといえます。
- もちろん、最近では遺伝子研究が進み、いろいろな生活習慣病に遺伝が大きく係わっていることが分かってきています。しかし、仮におおもとの原因が遺伝にあったとしても、ライフスタイルの崩れがこの遺伝的素因を引き出すケースが少なくはないと考えるべきでしょう。
- よく引き合いに出されるのがピマ インディアンのケースです。現在、ピマ インディアンはシェラマドレ山脈に住むグループとアリゾナ州に住むグループがありますが、基本的に一つの種族であり、同じ遺伝的な素因を持っています。
- シェラマドレ山脈に住むグループは農業に従事し、脂肪摂取の少ない食生活を守っています。それに対してアリゾナ州に住むグループは農業から離れ、アメリカナイズされた高脂肪食をとるようになりました。その結果、後者は成人の90%が高度肥満という現状を招いてしまったのです。
- このことは、運動不足や高脂肪食が高度肥満につながる遺伝的素因を引き出してしまったことを示しています。逆に、そのような遺伝的素因を持っていても、活動的で節制された食事をとっていれば高度肥満になる可能性は低い、ということもいえるのではないでしょうか? シェラマドレ山脈のピマ インディアンはアリゾナのピマ インディアンに対し、同じ遺伝的素因を持ちながら、平均体重が26kgも軽いのですから。
- ライフスタイルの崩れが慢性疾患を招く時代です。私たちの一人一人が、「自分で自らの健康を守る」という意識を持つことが極めて重要になってきているといえるのでは?