帰ってきたFMV-BIBLO MC4/45C
1月に液晶画面が割れてしまって、長いこと使用不能になっていた私のモバイル機、FMV-BIBLO MC4/45Cが、修理を経て、復活してまいりました。
前回にもお話ししました通り、液晶画面が割れた翌日、というタイミングで、富士通より新しい親指シフトタイプのモバイル機「FMV-BIBLO LOOX S9/70」が発売されたのでしたが、小躍りしたのも束の間、従来の親指シフトキーボードとは、全く異なるタイプのキーボードであることがわかりました。とはいえ、1kgを割るモバイル機だし、エミュレーションとはいえ、親指シフトをうたっている機種です。私は、南青山のアクセスさんで、このノートを体験することにしました。もちろん、感触が好ましいものであれば購入も検討しますし、場合によってはA4タイプの購入も考えています。
実際に店舗の展示スペースで見たLOOXは、見た目には全く親指シフトキーボードを搭載しているようには見えません。中央の大きなSPACEキーを、「変換」「無変換」を兼ねた小さな「親指」キーがはさむ形になっており、形状的にはどうみてもJISキーボードそのものです。「親指キー」は他の文字キーほどの大きさしかありません。旧来の親指シフトユーザからすれば、スペースの位置が大きく変わるし、私のようにOASYSの時代からなじんでいる人にとっては、TABキー、BackSpaceキー、Escキーの位置も違うのでかなり戸惑うことでしょう。しかし、JISキーボードのエミュレーションからスタートしている人にとっては、おそらく違和感のない配置なのだと思います。むしろ、「小さく窮屈なモバイル機で、親指をくっつけて打つという悪い癖をつけないためにもいい」という意見を述べている人もいるくらいです。
というわけで、試してみました。最初は、椅子に座らず、いい加減な姿勢で入力を開始してみました。やはり、当初の予想通り、小さすぎる親指キーはまともに打てません。となりのスペースキーを叩いてしまい、2-3文字置きに誤打鍵が発生します。次に、きちんと椅子に座って打鍵をしてみました。すると、誤打鍵は5-6文字に1回、という感じで減りましたが、それでも文字キー、親指キーの同時打鍵がうまくいきません。親指キーが小さすぎるのです。特に中央の文字、さらに下段の文字ではほぼ100%の確率でミスします。数回やり直してようやく正しく打鍵できるありさまでした。わざわざスピードを抑えて入力しているのに…。
実は、MC4/45Cをやはりアクセスさんの店頭で体験したときにも似たようなことはありました。しかし、「デスクトップと比べれば劣る」という感じで、少し慣れれば非常に快適に入力できるようになったのです。しかし、今回のLOOXは、現段階では「私にとっては」実用に耐えられないレベルであるように感じました。多少の慣れで、打鍵ミスは減るとは思われますが、MC4/45Cのように快適に打てるようになるとは到底思えないほどの使いにくさです。これは「親指キーが小さい」ということだけでなく、キーボード全体がMC4/45Cよりもさらにコンパクトで、キーボードの質的にも一段劣る感じであることも助長しているとは思われます。また、処理のリスポンスも、トランスメタ社のクルーソーという省電力CPUを使用しているせいか、重い感じです。MC4/45Cのようにドライバレベルの対応ではなく、Japanist2002というIMEのエミュレーション機能を利用していることも左右しているのかもしれません(とはいえ、MC4のようなノートのドライバは、ハードウエアから送出されたキーコードをドライバで親指配列の文字に変換しているようです。デスクトップ機などは、ハードウエアが直接親指配列に相当するキーコードを送出していると考えられ、その実現方法は異なります)。
しかし、特に中央のキーをミスしやすいことからも、もし親指キーがまともな大きさで、多少なりとも高くなっていたら、この打鍵ミスは大幅に減らせたのではないかと私は思います。
使用してみてやはり、LOOXのキーボードはMC4/45Cに大きく劣ることがわかりました。また、古くから親指シフトキーボードを利用している私としては、SPACEキーの位置や、TABキーの位置などにも大きな不満を覚えてしまうのです。
今回の親指シフトキーボードエミュレーションタイプの発表は、従来よりエミュレータ(日本語106キーボードなどを、ソフトウエアで親指シフトキーボードとして使う)を利用していた人にとっては、かなり喜ばしい発表かもしれません。しかし、従来の親指シフトキーボードを長く使っている人からすれば、非常に残念な製品だと思います。どうも、今回の親指シフトタイプでは、一部機能キーの大きさが変更されていることから、専用のハードウエアを作っているようなのです。それならなぜ、従来の親指シフトキーボードにしてくれなかったのでしょうか?
私のようなヘヴィ親指シフトキーボードユーザについて、「OASYSから離れられない、PCに適応しにくい人」という印象を受ける人もいるようです。しかし、残念ながらそうではありません。私は1995年以来、OASYSは使っていません。従来の資産をPC上に生かすために、PC用のOASYSソフトは所持しているものの、それを文書作成や文字入力に使ってはいないのです。そういった状況においても、私にとっては親指シフトキーボードのほうが効率がはるかによく便利です。
LOOXの配列では、デスクトップと使い分ける際に、SpaceやTabキーの位置などをいちいち意識しておかなければなりません。これはかなり負担を強いられる作業です。ぜひ、富士通さんには、旧来の親指シフトユーザもサポートできる「真の親指シフトキーボード」を搭載するモバイル機の後継機を出していただきたいものです(どこまでが「真」かは意見が分かれそうですね。私の場合はMC4/45Cまでを「真」の許容範囲と考えています)。
このようなわけで、LOOXの購入はあきらめ、MC4/45Cの修理にて対応することにしました。見積もりでは10万円近かったので、LOOXの購入は魅力的だったのですが…。
まず、富士通のフリーダイヤルに電話をし、「パソコン修理便」というシステムを利用した修理を依頼します。以前電話で故障の状況を伝えていたので、電話番号と名前を伝えるだけで、手続きができました。
前回、今回と驚いたのは、電話口の担当者の対応がとてもよいことです。私は失礼ながら、メーカーはサポートが命、といいながらも実体はショップブランド以下で、価格だけ高い、というイメージを持っていました。もうなくなってしまいましたが、数年前に富士通の秋葉原ショールームで男性社員にいろいろうかがったときには、あまりにも横柄な(失礼…)態度に驚かされたものです。しかし、前回、今回の電話口の男性は明らかに訓練を受けている人という印象を受けました。
もちろん、夜はほとんど電話がつながらない、という実態もあるため、一概に称賛するわけにはいかないと思うのですが、今回の富士通の修理窓口の担当者の方々の対応にはとても好感が持てたのは事実です。
パソコン修理便のシステムそのものも、私たちにとっては助かるシステムです。1994年に私のオアシスが初期不良を起こしたときは、「私が」「自分の足」で、遠い修理センターに出向いて、修理してもらわなければなりませんでした。それが、今回は、富士通さんが梱包材から何から用意してくれて、また配送料もパソコン修理便持ちです。
電話の翌日、クロネコヤマトの担当者が来て、翌々日には、直接修理をされる担当の女性から電話が入りました。やはり液晶画面の交換ということですが、見積もりは8万円強に下がってくれました。そこで改めて依頼することで、担当の方は修理にかかります(もしここでキャンセルすると5000円の負担になります。これはすでに最初の窓口で説明を受けていました)。
修理の状況は、オンラインでいちいち確認することができます。間に祝祭日が入っていたのですが、あまり時間がかかることはありませんでした。数日後に改めて「修理が完了しました」という担当者からの電話が入り、翌日には受け取ることができました。約1週間で修理が完了。以前のOASYSの修理に比べて、ずっと短い時間だったし、富士通さんに渡す手続きの面倒くささが全然違いました。企業も、明らかに進歩しているのです。
前日には、オンラインでどのような対応を行ったかが、かなり詳細に確認できる状況になっていましたので、これは便利だなと思いました。液晶の部品交換だけでなく、キーボードなどの清掃もしてもらったようで、確認してみるととても綺麗になっています。
そして実際に使ってみて、やはりいいですね。MC4/45Cは。先のLOOXの体験にかなり失望していただけに、この製品はすばらしいと改めて感じた次第です。12月にコンパクトキーボードを購入していますが、それ以上の打ちやすさだと私は思っています。親指シフト専用タイピングソフトを使用してテストしてみても、コンパクトキーボードより、MC4/45Cのほうが成績がよいぐらいですから。
現在、WindowsXP Professionalを導入していることもあり、基本的な動作が遅いのが玉にきずですね。HDDの容量が少ないため、それを交換した上で、Windows XP Professionalを再インストールしたことで、多少パフォーマンスが上がったような気はします。もう少し動作が軽いとよいのですが、親指LOOXと比較するとリスポンスもよく、ほぼ満足です。
また余裕が出てきたら、専門業者にCPUの交換やメモリチップの交換などを依頼してみようと考えています。