親指シフトキーボード搭載ノートPC到着!
前回のこのコーナーで紹介したFUJITSU FMV-BIBLOの夏モデルの一つ、「C4/45C」がついに到着しました。
今回は富士通のWeb Martから購入しましたが、注文から到着まで12日の期間があり、ずいぶん待たされたな、という感じがあります。また、私がオンラインで購入した製品としては、最高価格のものなので、いろいろと心配もありました。
この機種については、発売当初からほしくてたまらなかったのですが、極端に品薄な状態でした。富士通のこの機種に限らず、多くのメーカーで製品をつくる部品の調達に苦心していたようですね。 そんな状態だったため、表参道の富士通専門ショップ「アクセス」のスタッフの方からも、「次回発表の冬モデルを待ったほうがよいのかもしれません」というアドバイスをいただいていました。
しかし、前回も述べたように、今回の冬モデルからは親指シフトキーボード搭載ノートは姿を消してしまっていたのです。そこからこの機種を探すためのあらゆる努力が始まったのですが、インターネットで調べていくうちに、冬モデルに期待をしていた人は私だけでなく、多くいたことがわかりました。
このような状況の中、今回Web Martで入手できたのは本当にラッキーなことだと思っていました。 しかし、この原稿を書いている最中に、アクセスさんから、「11月中旬入荷予定」のアナウンスがありました。そして、アクセスさんのほうでは、私がWebMartで購入した額より2万円も安い価格で提供されているのです。しかも、USBマウス、テンキー、バッグ付きで…。まあ、1ヶ月早く入手できたことを良しとしますか。
それにしても、コンパクトB5サイズは小さい! 私が親指シフトモデルのノートパソコンを購入するのは、これが3台目になります。今までの機種と比較して今回大きく異なるのは、前の2機種がA4サイズであったのに対し、今回のモデルはコンパクトB5サイズであること。
以前、アクセスさんで現物は見ていたものの、思いのほか「小さい」。また実際、1日持ち歩いてみても、私にとっては非常に「軽い」。
今まで3kg以上のノートを利用していました。「別に筋力があるからいい」なんてバカなことも考えていたのですが、いざ持ち運んでみると、約1.4kgと手軽に扱える重量はありがたいですね。
後に購入したFKB8579-661との比較
インターネットでこの機種やより以前の機種に関する評価などを見てみると、タッチパネル搭載であるため、画面がテカテカして「見づらい」という意見が多いですね。確かに、周囲の環境によってはつらいと思います。おそらく太陽光の下や明るい蛍光灯が写り込むところでは、実用にならないかもしれません。
そのほか、なぜか<親指左>と<親指右>の高さが異なるのです。これについても、インターネット上にある使用者の感想などを調べて知ってはいましたが、いざ自分のものになってみると結構気になるレベルですね。
これは2世代前のMC2/40でも指摘されていたことなのですが、現在も引きずっているとは。
ほとんどのノートパソコンには独自のポインティングデバイスが内蔵されています。しかし、このようなポインティングデバイスを使いこなすのは私にとっては非常にわずらわしく、「結局はマウスを使うことになるんだ」とタカをくくっていました。
しかし、MCにはタッチパネル機能があります。これを試しに使ってみると非常に便利! いちいちタッチペンを拾わなければならないところは難ですが、アイコンなどは指でも指定できますから、ほとんどマウスに変わるくらい実用的な代物です。
もちろん、高速な動きをするゲームなどを試してみると、タッチペンではつらすぎます。ただ、私のようにテキストを打つことが目的の人にとっては必要十分な機能を持っていると感じます。
今回の目的は、親指シフト入力が可能なノートパソコンの購入。つまり、これが私にとっては一番大切な要素となります。
まず、基本的な親指シフトキーボードの入力感覚について、キーボードが小さいので、誤打鍵を起こしやすいのではないかと少々心配でした。実際、アクセスさんで体験させていただいたときにも、おそるおそるタイピングしたためか、そこそこ誤打鍵が発生していたからです。
しかし、いざ自宅に届いたMCを使ってみると、思ったほどタイプミスをすることはありませんでした。デスクトップ用のキーボードと違い、少々クリック感があるので(過去に使ったノートよりパシャパシャしてます)、多少の慣れは必要のようです。1日使ってみた感想では、誤入力の割合の問題は別として、デスクトップキーボードと変わらないレベルで高速入力が可能かな、という感じです。
親指シフトキー(親指左・親指右キー)と文字キーを同時に打鍵することが必要になるため、タイピングの姿勢は非常に重要です。適切な高さに設置したMCでタイピングを行うとかなり快適なのですが、床に置いてタイピングをしたりすると、非常に誤入力が多くなってしまいますけれど。
この機種の変換・無変換キーは独立しておらず(LIFEBOOKというビジネスモデルのノートパソコンもそうですが)、親指シフト特有のシフトキー「親指左」「親指右」と共用しています。
無変換は<親指左>、<変換>は<親指左>と同一キーになります。そのため、高速に入力すると、<変換・無変換>なのか<親指右・親指左>なのかの判定を誤り、思いがけない形で変換されることがありますね
たとえば、「…と思う」と入力する場合。「と→ 無変換 →お(と+<親指右>)→も(せ+<親指左>)→う」と入力したはずが、「と→ど(と+<親指左>)→<変換>→も(せ+<親指左>)→う」という形に解釈されて「…トドもう」になってしまうわけで…。
これは、最初の「と」の後に行われるべき無変換が、<親指左>と解釈されることから始まり、「お」を出すための<親指右>が変換と解釈されてしまったために起こることでしょう
残念ながら、現在の私のタイピングスピードの場合、かなりの確率で発生してしまう問題です。<親指左>や<親指右>が文字キーとの同時打鍵のために使われたのか、あるいは単独の<無変換>と<変換>として使われたのかを判定するタイミングをカスタマイズできるとよいのかもしれません。
MCの親指シフトには、上記のような問題もありますが、若干入力スピードをコントロールしたとしても、ローマ字で入力するよりはるかに高速です。
私はローマ字でもかなりのスピードで入力することが可能ですが、打鍵数が多い分、親指シフトよりもさらにタイプミスが起こる確率は高くなるのがわかります。MCはデスクトップ用の親指シフトキーボードと比較した場合に、ミスタイプは多少多くなるかもしれませんが、それでもローマ字入力と比較すればずいぶん少ないといえるでしょう。
このような点から、スピードだけでなく、タイプミスにより思考を分断されることが少ない、という「快適さ」においても親指シフトはかなりすぐれているように思いますね(私は最初ローマ字入力からスタートし、かなり高速に打てるようになったあと(JISかなワープロオペレータと同等でした)、途中でJISかな入力に切り換え、最終的に親指シフトを選択しました)。
もちろん、以上は私にとっての話です。
反面、親指シフトにはその快適さと同等に大きな問題を抱えているといえます。
それは「互換性」問題。たとえばやむを得ない事情で、他人のPCを操作しなければならないというようなケースでは、親指シフト入力はあきらめなければなりません(逆に、親指シフトキーボードでローマ字入力することは可能なんですが…)。
もちろん、JISキーボードを親指シフト配列に変更するエミュレータも存在しますが、それを他人のPCや客先で使うなんてことはできないでしょう。これは、これから親指シフトキーボードに乗り換えてみたいんだけどな、という人にとっては大きな障害になっていると思います。
実際、どこの企業にいって、パソコンを貸与されたとしても、親指シフトを支給してくれるところは少ないと思いますね。また、多くの環境で、親指シフトはドライバ、日本語入力ソフトウエア(IME)の対応が未熟です。
また、通常、各社の親指シフトキーボードをPCで動かす際には、PS2の拡張が必要になるようです。つまり、Microsoft社などのPS2対応スクロールマウスと併用することは基本的にできません(OSに付属する標準のドライバなら問題ないようですけれど)。
このような理由で、PCにとっては親指シフトはどうしても「特殊な機器」になってしまうのでしょう。こんなすぐれたインターフェースが、PC上で異端児扱いされるのはつくづく残念。
「あと1ヶ月待てば、同じものが格安で、しかもマウスやテンキー・バッグのおまけ付きで手に入った」ということを残念がっているわけではありません(まあ、ちょっとは…)。
本当に残念なのは、今回の冬モデルから、店頭モデルタイプの親指シフトキーボード搭載ノートが姿を消してしまった、ということです。
上にも書いた通り、親指シフトは特殊なものなのかもしれません。しかし、これから店頭モデルでの入手が不可能となると、それはますます特殊なものになってしまいます。
親指シフトキーボードは、現在でも数多くのユーザがおり、その人たちはおそらくオアシスというワープロの創世記から富士通を支えてきた人たちではないかと思います。そのようなユーザの声を決して裏切ってほしくはないと、私は切に願います。
富士通さんとしても、親指シフトエミュレータ(ソフトウエア)などを配布したり、自社製品に含めるようにしたりして、オアシスからの乗り換え組の人が少しでも使いやすいように努力はしてくれていると思います。しかし、業務上、ハードウエアレベルでのサポートを必要としている人たちが数多くいることをぜひとも知っていただきたいと考えます。「結局エミュレータ対応で」すべてをすませるという対応になってしまっては困るのです。
私はMCの性能と機能に現状ではほぼ満足しています。これから打ち方に慣れてくると誤入力も大きく減るでしょうし、大いに活躍してくれると思います。ですが、いずれは古くなり、故障したり、最新のソフトが使えなくなる日も必ずやってくるのです。そんなとき、私は再び今回のMCのような救世主にあいまみえることはできるのでしょうか?
※親指シフトキーボード搭載ノートパソコンは2000年冬モデルでも、2001年春モデルでも販売されませんでしたが、ここで紹介したFMV-BIBLO MC4/45CはときどきWeb Martのアウトレットコーナーに顔を出すようですね。またアクセスさんが在庫を見つけて積極的に販売してくださっているようです。世代が古い製品でもいいから、作り続けてほしいな…。