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中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

ドラゴンの顔

「どうしても会ってみたい」と心より願ってみても、それがかなわぬ人がいる…。

私が運動を始めるきっかけとなった映画に主演していたのは、ほかならぬブルース リーでした。彼がいなければ、私は一生運動に関わらなかったかもしれません。ぜひ会って感謝の気持ちを伝えたいところなんですが、彼は30年近くも前にこの世を去っています。残念ながら、彼に会うことはもうできません。

しかし、2002年1月17日、私は彼と意外な形で対面することになりました。ブルース リーのライフマスクを入手したのです。

ライフマスクとは、生前に対象者の顔に特殊な石膏を塗って、その型取りをし、とった型にあらためて石膏を流し込んで作成した、まさしく生き写しの像なんです(映画においては俳優さんのメイクを研究するのにとられるものなのだそうです)。

今回入手したライフマスクについては、家内があるオークションサイトで落札してくれました。このライフマスクは最近、ゴールデンハーベスト(香港のブルース リー映画を制作していた会社です)から発見されたといわれるライフマスク(の型?)をもとに新しく作成されたものだといわれています。

ライフマスクが届いたという一報を家内より受け取り、20数年来ファンの私は、ついに「ドラゴンの顔」を間近に見られる、というよろこびが満ちあふれてきました。急いで家に帰り、開封作業に入りました。最初は興味を持っていた長男も、開封が進むにつれて、人の顔らしきものがあらわになってきたせいか、びびっちゃって、「それ以上開けないでーッ」と叫んで逃げていきました。

そして、最後の梱包物を取り外して、そこに現れた真っ白な「ドラゴンの顔」。

「あれっ? 普通の人だ」「本当にブルース リー?」。率直な感想です。世界的に有名な映画俳優、武術家ということで、私のほうが構えすぎていたのかもしれません。しかし、どこからどう見ても彼ですし、いろいろな写真と見比べてみても、おそらく1972年ごろの彼であることに間違いないでしょう。2000年に完成した「Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯」(1972年撮影)のイメージにきわめて近いですね。

1960年代半ばにアメリカでとられたライフマスクと比較すると、顔がほっそりしており、かなり精悍な印象を受けます。写真で比較する限り、質感もいいと思います。

ただ、ブルース リーの右側の頬には、かなり目立つ切り傷がありますが、このライフマスクでは確認できません(ブルース リーのアップの写真をみると、鼻の下にも傷が…。武術家の宿命でしょうか?)。1960年代のものには、うっすらと確認できるものもあるのですが、私が入手したものは、あえて目立たなく加工してあるのかもしれません。

私はこのライフマスクがブルース リー本人のものだと信じています。もちろん、本人である証明書も付いていないし、本人もすでにこの世の人ではないため、本物である証拠はなにひとつありません。しかし、私にはこのライフマスクが、「おれがドラゴンだ」と力強く主張しているように感じられます。

ファンになって20余年。生きかたを変えて20余年?! 今まではフィルムや写真を通してしか彼をながめたことがありませんでした。どこか偶像のような部分があったと思います。実在した人物とわかっていても、半ば超越したイメージを持っていたことも事実です。しかし、今回は彼の顔から型取りしたライフマスクとの対面です。彼が人間として生きていたこと、思ったほど小顔でもなかったこと? 思ったほどこわもてでなかったこと、とりあえず人間だったこと…etc。いろいろなことが伝わってきました。この顔が、長い間「会いたがっていた男」、すなわち「ドラゴンの顔」なんですね。

よし、今からまた気合入れ直して生きていこう! しかし、興味がない人からみたら、きっと不気味でしようがないんだろうな…。

最後に、品質の良いこのライフマスクを非常に丁寧に保管・郵送してくださった提供者の方、落札ほかいろいろな手続きを行ってくれた愛子ちゃん、ありがとう。 

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