アスレチック ジム
中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

ビギナーにはマシン? フリーウエイト?

目次

  1. はじめに
  2. マシンとフリー ウエイトについて
  3. トレーニング マシンのメリット
  4. トレーニング マシンのデメリット
  5. フリー ウエイトのメリット
  6. フリー ウエイトのデメリット
  7. 器具選択の目安

※目安だけを知りたい方は7.を選択してくださいね。

 

はじめに

ビギナーのかたが筋力トレーニングを始める場合、一般的なフィットネスクラブでは「トレーニング マシンよりフリー ウエイト(バーベル・ダンベルなど)のほうが適する」と指導するケースが多いようです。

しかし、私自身はこれはケース by ケースであり、必ずしも全員に当てはまることではないと理解しています。

そこで、ここではマシン、およびフリー ウエイトに関する、ビギナーにとってのメリット・デメリットを紹介することにしましょう。ご自分に合った器具を選択してみてください。

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マシンとフリー ウエイトについて

ここでは、マシンとフリー ウエイトについて、基本的に以下のような解釈をしています。

  1. トレーニング マシン
    1. 一つあるいは複数の筋力トレーニング動作を合理的に実現する環境を提供する機械のことです。
    2. 多くの場合、フリー ウエイト器具を使った種目を模して、ほぼ同じ動作で筋力トレーニングができるように設計されています。
    3. もちろん、マシンオリジナルな動作を実現できるものもありますが。
    4. 多くの場合軌道が規定されているため、どの人が使ってもほぼ同じ動き(フォームそのものが同じというわけではありませんが)を再現できます
  2. フリー ウエイト
    1. これは、トレーニングを実施する人がどんな方向にでも自由に動かせる、という意味から名付けられた名称で、バーベルダンベルなどの器具の総称として使われます。

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トレーニング マシンのメリット

トレーニング マシンが初心者に適する、といわれる所以でもあるでしょう。

  1. 落下の危険性が少ない
    1. バーベルやダンベルなどは、利用中に落下した場合、足や顔面を直撃する可能性がマシンと比較した場合高いのですが、多くのマシンでそのような事故防止対策が施されています。
  2. 軌道が安定していて動作を覚えやすい
    1. バーベルやダンベルなどのフリーウエイトは、自分でそれらをコントロールして軌道をつくって行かなければなりません。それに対して、ケーブルマシンなどを除くマシンの多くは、最初から軌道が規定されています
  3. 負荷のコントロールを行いやすい
    1. ウエイト スタックという、ウエイト プレートを必要な枚数利用できるマシンは、フリー ウエイトと比較すると、重量の調整が容易です。多くの場合、ピン1本でウエイトを簡単に調節することができます。
    2. 負荷設定に空気圧を利用したマシン、例えばカイザーなどは、より快適に空気圧を調節できるようになっています。
    3. ただし、最近では、マシン並に簡単にウエイト調節を行えるダンベルも発売されています。私もほしいと思っているのですが…。金がない。
  4. 可変抵抗
    1. 初心者に適している、ということとははずれますが、現在発売されているマシンの多くが「可変抵抗」もしくは「調節抵抗」の機能を実装しています。
    2. これらは、運動実行時の関節の角度に合わせて、筋肉に与える負荷を変更するもの、あるいはトレーニー(トレーニングする人)の出力に合わせて負荷を調節する機能のことです。
    3. 通常、フリー ウエイトでトレーニングを行う場合、トレーニングをしたい筋肉に対して常に一定の負荷がかかっているわけではありません。ですから、強く負荷のかかる関節角度では十分に筋肉に刺激が与えられたとしても、それ以外の角度では刺激が足りないかもしれません。
    4. それに対して、可変抵抗や調節抵抗においては、より高い出力が可能な関節角度に対してより高い負荷を与えたり、あるいはその逆を行うことも可能です。
    5. もちろん、フリー ウエイトでも「パーシャル レップス トレーニング システム」などで解決することは可能ですが、1回の往復で全部の角度に強い刺激を与えることは実現できません。
  5. 効率的なスピード トレーニングが可能?
    1. D.で挙げた空気圧のマシンについては、トレーニング部位に最大負荷をかけながらスピード トレーニングを行うことが可能です。
    2. フリー ウエイトの場合は、慣性の法則で加速がつくため、必ずしも適切な負荷を継続できない場合があります。

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トレーニング マシンのデメリット

2.を見れば、まるでマシンはフリー ウエイトにも勝るかのようです。しかし、上記のメリットは裏返せば、以下のようなデメリットにつながることもあるのです。

  1. 落下の危険性が低い=緊張感を養いにくい
    1. フリー ウエイトでは常にウエイトのコントロールを意識しなければならず、落下の危険性もマシンに比べて大きいため、おのずと緊張感が養われます。
    2. それに対して、落下の危険性が少ないマシンでは、フリー ウエイトに対して緊張感を得にくいのも事実。
    3. 次のステップでフリー ウエイトに移行する場合、十分な教育がなされない場合、事故を誘発する可能性があります。
  2. 軌道の固定が障害の原因に
    1. マシンでは、軌道が固定されてしまっているために、自分にとって最適な軌道をとれるとは限りません。ですから、逆に思わぬ動作を強いられて障害を起こす場合があります。
    2. また、フリー ウエイトは自分でコントロールしないと動作を制御できませんが、マシンはある程度崩れたフォームでも重量をコントロールできます。例えば、左右が独立していないような種目では、普通に上げているつもりでも、右手が70%、左手が30%というような出力をしているかもしれないのです。
    3. このため、非常に悪いフォームを身につけてしまうこともあります。
    4. こういった特性が原因で起こった障害を私は何度も目撃しました。十分な注意と配慮が必要です。
  3. 空気圧の負荷の設定に注意
    1. 例えばカイザーK300というマシンでは、脚のトレーニングを行う場合には手で、逆に腕のトレーニングを行う場合には脚で負荷を簡単に調整することができます。
    2. しかし、設定の方法を誤ったり、あるいは運動中に誤って空気圧調節用のフットプレートを踏んでしまった場合など、思わぬ負荷の上昇でけがをしてしまうことがあります(何を隠そう、私がその経験者の一人…)。
    3. 決して無茶な負荷を設定したり、あるいは目茶苦茶なフォームで行わないよう、コントロールが必要です。
  4. 質の低いマシンに注意
    1. ピン1本でウエイトをコントロールできるウエイト スタック方式のマシンは基本的に便利なものですが、フィットネスクラブなどに導入されているマシンの中には「設計ミスでは?」と思われるほど問題のあるものもあります。
    2. あるメーカのマシンは、運動中にウエイト プレートを支えるピンが運動中に外に飛び出すことがあります。ピン飛び出すだけでも問題なのに、それがユーザ側に向かっている場合、思わぬけがの原因になってしまうのです。
    3. 実際、私の知り合いのスタッフがそのマシンを使っている最中にピンを飛ばしてしまって、けがをすることを目撃しました。
    4. 実はつい最近も、同じメーカのマシンでピンが勢いよく飛び出すのを目撃したので、気になっています。
    5. このような事故を防ぐためには、なるべく動作スピードを落として、ゆっくりと正確な運動を心がけることです。
    6. また、プレート1枚だけを利用して運動を行うような場合には、ピンを差さない方がよい場合もあります。このような細かい注意点については、お使いの施設のインストラクター・指導者に確認してみてください。
  5. 可変抵抗のデメリット?
    1. これについてはいろいろな意見がありますが、可変抵抗や調節抵抗のような負荷のかかり方、というのは、水中エクササイズを除いて、日常的にあまり起こりうる現象ではありません。
    2. ですから、「スポーツのパフォーマンス向上に必ずしも結びつくとはいえない」という人もいます。

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フリー ウエイトのメリット

フリー ウエイトとは、ダンベルやバーベルなどの器具を指します。

  1. 緊張感を養える
    1. 初心者にとってのメリットでもありますが、中・上級者にも有益だと思います。
    2. フリー ウエイトの操作は、常に「落下の危険性」との戦いです。そのため、非常に高い緊張感と集中力が養われるといえます。
    3. また、プレートの落下事故を防止するために大切な基本である、留め金(カラー)をしっかり締め、確認するなどの作業が必要になり、安全管理の意識が高まるというメリットもあるでしょう。
  2. 軌道をコントロールすることのメリット
    1. 軌道をコントロールする必要性は、学習効果をも生み出します。また、それ自体が一つの面白みであるともいえるでしょう。
    2. より難しいフリー ウエイトの動作をきちんとつかむことは、マシンを利用する際にも有益です。マシンのデメリットで述べたような「左右の出力差」などを解消したり、きれいなフォームでのトレーニングを実現することになるからです。
    3. また、軌道がフリーである、ということは、自分の好きな位置に下ろせ、あるいは上げることができる、というメリットがあります。ですから、正しいフォームでトレーニングすることで、関節などの障害を抑制することができると思われます。
    4. それに対して、軌道が強制されるマシンの場合、気づかずに関節や筋肉などに大きな負担を与えてしまうことがあります。
  3. 器具によっては手軽に行える
    1. 例えばご家庭で筋力トレーニングを行いたい、とお考えの場合、マシンよりもフリー ウエイト器具のほうが手軽に購入できたり、利用できるでしょう。
    2. 筋力トレーニングにある程度有効なマシンを導入しようと考えた場合、多くのケースで金額や設置スペースに悩むことになります。ところが、ダンベルなら、比較的安価でマシンほど設置スペースを考慮することはないでしょう。「ダンベル体操」が流行したのも、そんな手軽さが一つの理由だったのではないでしょうか?
  4. 体に一度にかかる負担を減らすことができる
    1. 特にダンベルを使った運動では、軽い重量で片手ずつのトレーニングを簡単に行うことができます
    2. 小さい関節を動かすような種目は、大きい関節を一度にいくつも動かすような種目に対して体にかかる負担が小さいのです。
    3. このような理由から、小さい関節を動かす種目から始めて、段階的に大きな関節を動かす種目、あるいはそれらを複数まとめて動かすような種目に移行していくことは、体力の低い初心者に対して非常に合理的なプログラムであると考えられます。
  5. 非常に軽い負荷からのトレーニングが可能
    1. ダンベルは1ポンド程度(454g程度)の重量から市販されているようです。体力水準がかなり低いレベルにある人が筋力トレーニングを開始する場合には、非常に有益です。

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フリー ウエイトのデメリット

フリー ウエイトが初心者には向かないとされている根拠として挙げられる場合が多いのですが、採用を判断する場合は、そのメリットも十分に考慮すべきでしょう。

  1. 落下の危険性が高い
    1. 特に、バーベルやダンベルなどの器具を頭上・顔面・胴体の上に差し上げるような種目では注意するべきです。
    2. 無理な動作・負荷で行わない、複数でトレーニングを行うなどの工夫で事故の可能性を低くすることができます。
    3. また、プレートがはずれないよう、カラーで固定されているか確認することは大切な心がけです。
  2. フォームの習得が難しい
    1. フリー ウエイトとは名前の通り、どこにでも自由に動かせる器具です。ですから、一つの動きを自分なりに規定していくのに多少の時間がかかるでしょう。
    2. それに対して、マシンは最初から軌道が規定されている場合が多いので、動きそのものを創っていく手間は省けるのです。
  3. 手軽さが生む弊害
    1. ダンベル体操が爆発的に流行していたころ、当時所属していた施設の、決して少なくない会員の方々から「あれを始めてしばらく経ってから、肩や手首が痛くなった」という相談を受けました。
    2. その方々のフォームや頻度を確認してみると、それも当然かもしれないと思いました。フォームは関節を守るための基本的な動作が守れていないし、またどの筋肉をターゲットにしているのか、全く意味不明の種目も含まれていたからです。
    3. 頻度も、「毎日」行われていたのでは、筋や結合組織に蓄積される疲労の回復に十分な時間がとれません。
    4. これは「手軽に実践できた」反面、十分なフォーム固めや知識を得ていなかったことが原因でした。また、種目やフォームが適切でないなど、ダンベル体操の教材そのものにも問題があったと感じます。
  4. 鉄アレイなどが手首に与える負担
    1. プレート交換式のダンベルのように、動作に伴ってプレートが回転するタイプの器具は、手首に対する負担を軽減することができます。
    2. ところが、鉄アレイなど、ウエイトの部分が固定されていて回転しないものは、動作中にその部分に加わる遠心力が手首に加わり、腱鞘炎などの原因になることがあります。
    3. このようなタイプのダンベルは、10kg未満の軽いダンベルに採用されていることが多いようです。1回1回の動作をゆっくりと正確に行うことが大切です。
  5. ダンベル コントロールの難しさ
    1. 一見手軽に見えるダンベル運動ですが、これらは基本的に1本の腕で1つのダンベルをコントロールするというトレーニング方法を採用しています。
    2. このダンベル運動は、両手で1本のバーをコントロールするバーベル運動に比べ本来動作の難易度は高いといえます。単に動作を繰り返すだけでなく、体の感覚に頼りながら無理な動作を排除していく工夫は必要になるでしょう。
  6. バーベルの動作制限
    1. Eとは逆になりますが、両手で1本のバーをコントロールするバーベル運動は、片手で1つのダンベルを利用するダンベル運動に比べて動作上の制限が大きくなり、この特性が逆に手首や肩などに負担をかける、という考え方もあります。

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器具選択の目安

かなり冗長なアドバイスとなってしまいましたので、初心者が筋力トレーニングを開始する場合、目的別におすすめ(中原案)の器具を挙げてまとめることにしましょう。

あくまでアドバイスです。ご自分がよいと思われたものから始めてみてください。

  1. 通常の体力の持ち主で、フィットネスクラブに通われている、あるいは通うご予定のある方
    1. 現状ではトレーニング マシンの利用がよいかもしれません。インストラクターのサポート体制もより整っていると思われるからです。
  2. 体力・筋力に自信がないが、フィットネス クラブでのトレーニングを検討されている方
    1. 施設のインストラクター・指導員にご相談いただくのがよろしいかと思いますが、全身に負担をかける可能性が少ない、軽いダンベルでのエクササイズがおすすめです。
    2. 正しい方法をしっかりマスターすることです。
  3. 通常の体力をお持ちで、ご自宅でのトレーニングを検討されている方
    1. 設置スペースがあれば、オールインワンのマシン(ウエイト スタック・油圧など)を導入してもいいのですが、シンプルなベンチやダンベルの導入が現実的かもしれません。
    2. より本格的なプログラムを開始したい場合には、バーベルも候補に入ると思いますが、事故を防ぐために2人以上でトレーニングを行うべきでしょう。
    3. ダンベルを選択される場合には、プレート付け替え式がおすすめです。
  4. 体力的に自信がないが、ご自宅でエクササイズを始めてみたい方
    1. 軽いダンベルでよいでしょう。最初は1種目からでもいいと思います。興味や必要に応じて種目を増加していけばよいのです。

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