救護室
中原雄一( 21/10/20 Wed 22:43 更新)

RICEについて

1.RICEとは?

RICE(通常"ライス"と読みます)とは、運動中などに発生する外傷、例えば肉離れ、捻挫、骨折、打撲などに対して行う救急処置の頭文字をとってひとまとめにした言葉です。これは基本的に、全身的には問題がない場合、傷口が開いていない閉鎖創に使われる方法です。

最初のRを取ってICE("アイス"と読みます)という呼び方をすることもあります。

上記のようなケースでは、適切な処置を行い、医療機関に引き継ぎます。

次にRICEの各項目について解説してみましょう。

<<Rest(安静)>>

もし何らかの外傷を受傷したあとに、運動や活動を継続すると、その傷はさらに悪化(二次的腫脹、二次的損傷)することは明らかです。それを防ぐためには安静にすることが一番です。受傷部位を安静にすることはもちろんのこと、基本的には全身の安静をとることが必要です。

部分的な安静のために、副子固定、エア シーネ、テーピングによる固定が勧められます。

<<Icing(氷冷・アイシング)>>

安静をとったあとは、受傷部位をで冷やします。これをアイシングといいます。

氷で受傷部位を冷却することで、周囲の血管が収縮し、出血を少なくすることができます。内出血がひどくなり、受傷部位に血液がたまってしまうと、外傷からの回復が遅くなります。icebag.jpg (2455 バイト)

具体的な方法としては、例えば足関節なら氷水を入れたバケツに15分間、足をつけておく方法があります。

一般的には氷水を入れたビニール袋を患部に当て、包帯で固定する方法が用いられます。専用のアイス バッグ(写真右上)もあります。水泳の場合は、ゴム製の水泳帽で代用することもできるでしょう。

アイシングを長時間行い過ぎると凍傷を引き起こす可能性があります。1回20分程度を限度として24-48時間、間欠的に行うのが普通です。パワーリフティングのコーチに伺ったところでは、30分冷却するのが望ましいとのことでした。

スポーツの試合中に使われるコールド スプレーはアイシングの方法としては不適です。ほとんど役に立たないという専門家もいます。

<<Compression(圧迫)>>

患部が傷ついたあと放置しておくと、その部分は腫れてきます。これは、血液やリンパ液が周囲組織から流れ込んで蓄積されることによって起こります。

腫れは細菌を殺すための抗体を運んでくるという意味では有効ですが、皮膚が破れていない場合には回復に影響を与えるだけです。

この腫れがひどいほど、回復は遅れることになります。圧迫はこの腫れを抑制するのに有効な方法です。ただし、過剰な圧迫はその部分の血流を妨げてしまうため、循環障害を起こす可能性があります。

「やや圧迫気味」というのがコツといえるでしょう。テーピングや弾性包帯で圧迫する場合、間にスポンジやフェルト パッドをはさむことで圧迫を適切にできます。

<<Elevation(高挙)>>

これは受傷部位を心臓より高くする方法です。それによって、過剰な出血・腫れを抑制することが可能になります。

2.RICEを行う期間

このRICEというのはあくまでも外傷の急性期に対する対処の方法です。その実施期間ははっきりしているとはいえないのですが、一般的に48時間といわれます。また、それ以降はむしろ入浴などで温めるようにし、患部の血行を促進するのが一般的です。

フィットネス スポーツの最中に受傷した場合、RICEを行い、次に専門医の診断および治療を受けるように心がけましょう。安易に考えていると思わぬ後遺症を残す可能性があります。

3.RICEを行うべきでないケース

  • 心臓病およびレイノー症候群(四肢の血管がスパスムを起こし、血流が減少している状況)がある場合
  • 骨折・脱臼の症状、可能性があるときは適切な固定があるまでは挙上してはいけない
  • その近傍、その肢に重傷の開放創がある場合
  • 頭部、顔面、頸部に損傷のある場合、冷却は可能だが、圧迫を行ってはならない

参考図書:
『健康運動指導士養成講習会テキストⅢ 外科的処置(1)(2)』 福林   徹
『スポーツ傷害』J.D.バージャロン、H.W.グリーン著、武藤芳照、高岸憲二監訳

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